「もう1本だ、じーさん」



修練場。そこには、エクソシストや探索部隊など、任務が無い者が殆ど全て集まっていた。勿論奈楠も含まれていた。いつも奈楠の隣にいるリナリーは席を外している。ミランダとティモシーと共に任務に赴いているからだ。最近リナリーと居れる時間が極端に少ないので、奈楠は鬱憤を晴らすように組手をしていた。ちなみに全勝。神田をも負かす奈楠は、教団1の体術を誇っていた。



『うらぁああぁああああぁッ!!!』
「ちょ、奈楠、前より強くなってね!?」
『当たり前でしょうがッ!バカなこと言ってんじゃないわよ、死にたいの!?』
「静まりたまえーッ!!」
『リナリーが足りない……リナリーが足りないっつってんのよバカーッッッ!!!!』
「奈楠がご乱心さぁああぁ!!」



神田はいつもなら高く結い上げている髪の毛を下ろしていた。それは、ブックマンに髪紐を取られてしまったからでもある。ブックマンと神田の周りには、積み上がった探索部隊やエクソシストの数々。全て奈楠と神田に組手で負けた者だった。



「ほっほっほっほ、来るがいい神田。組手ならまだまだ若いモンに負けはせんわ!」
『……さっき私に負けたのに?(ボソッ)』
「奈、奈楠嬢!それは言うでない!」
「負かす」
「凄いであるブックマン!!鬼の神田に1歩も引けを取らんとは!」
「そろそろどちらが真のポニーテールか決めようぞ」
「神田先輩と奈楠さん、強いっス……」
「やれっジジィ!俺らと探索部隊の敵取ってくれさー!!!」
「(よし、コイツ終わったら奈楠とメシ行くか……)」
「ボコボコにしてくれブックマン!特に顔を!!!」
「潰れろ神田ぁああ!!」
『ったく……』



全員投げたしもう良いかな、と奈楠はその場を立ち上がり、アレンとマリの元へと向かった。


























「え?AKUMAをイノセンス以外で破壊する方法?」
「うんっ」
『自爆と共喰いじゃない?』
「わっ……奈楠!?」
『やっほ』
「もう終わったのか?」
『うん。全員投げ飛ばしてきたよ』



ケロっとした顔で笑いながら言う奈楠に、アレンとマリは苦笑しながらお疲れ、と言った。



「それで……共喰い!?」
『そ、AKUMAがAKUMAを吸収するの』
「江戸地区でそういう現象があった」
「共喰い、か……でも、あの緋装束の人は人間だったから、それは大丈夫か……」
「イノセンス適合者じゃなかったそうだな、気になるのか?」
『飲む?』
「うん」
「ありがとう」



お疲れ様、と言う意味も込めて2人にやかんをかざして見せる。コップを差し出してきたのでそこに注いだ。



「……んー、……AKUMAがね」
「え?AKU……?」
「遠目だったけど、あの時AKUMAは確かに破壊されて消えたんですよ」



イノセンスでなければ、AKUMAに内蔵された魂は浄化出来ない。それを、アレンは心配しているのだろう。アレンは、AKUMAに内蔵された魂を、人一倍気にして生きてきたから。アレンはボソリと呟いた。



「魂は大丈夫だったのかな……結界で左眼が利かなかったから、見えなかったんですよね……奈楠は?奈楠も、声は聞こえなかったんですよね?」
『……うん……。聞こえなかった。……どうなっちゃったんだろうね、……ちゃんと救済されてったのかな……』
「……AKUMAを心配しているのか?」



アレンと奈楠の呟きを拾ったマリが、2人に問う。ハッとしたアレン達は必死に謝った。



「ご、ごめんッ!マリは今回、指を失ったのに……!」
『不謹慎だったね』
「いやアレンに奈楠、お前ら少しは自分を心配しろ」
「『へ?何で?』」
「あのな、ここにいる人間は大半がAKUMAを憎んでるんだぞッ?我々教団や中央庁にとって、AKUMAの材料になった魂のことなど、どうでもいい事だ。お前達の戦い方は共感されない、そんなんじゃいつかお前達が辛くなるぞ」



奈楠は少し苦笑するが、アレンは少し下を向いてありがと、と言った。



「(やめるには、マナを忘れなくちゃならない。……それは、出来ないんだ)」
「…………はぁ……お前と神田が衝突する理由が分かった……似たもの同士だからだ」
「んなっ!?」
『ふふ、分かった?マリ』
「お前も苦労するわけだな、奈楠」
「ちょ、奈楠まで!?冗談でしょ!あんなバカまっしぐらと一緒にしないで下さいよ!!」
「『いや、お前/アレンもバカまっしぐらだ』」




















『……その癖、捕われてる闇が深すぎて……どうやって救い出してやればいいのか分からない』
「もどかしいよ、……アイツは私を救ってくれたのにな……」
「…………え……?」



今、なんて………



アレンが呆然とマリと奈楠を見つめていれば、2人はニヤリと笑ってアレンを吹き飛ばした。



「『スキありッ!!』」
「ゲッ!!……いだっ、きっ汚いですよマリ!!奈楠!!!」
『はっはっは、油断するアレンが悪い』
「「「!?」」」



アレンが吹き飛んだ先には人が居た。それに気付いたリンク、奈楠、マリは少しの異変に気付く。



「!ウォーカー」
「!?」
『アレン、』



アレンを支えた大柄の男。2人は見つめ合い、互いの存在を確認する。自分を支えてくれた男が初対面だったため、アレンはすぐに男から離れようとする。その際、彼の左腕とアレンの左腕が触れた。



「ん?」
「(!白髪にペンタクル……コイツは……)」
「わっ、すみませんッ!」
「(イノセンスッ!)」
『アレン、離れてッ!!!!!!』
「へ?」



ドガァン!!



アレンは物凄い勢いで柱に叩きつけられた。その音に修練場に居た全ての者が振り返る。奈楠はアレンの元に駆け寄る。



「!?」
「なんだ?」
「!(あの時の緋装束……!?)」
『アレン!』



















あの時のAKUMAは

(感じた違和感は、徐々に体を蝕んでいく)
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