バキッ、ドカァ!と何かに何かを叩きつける音が響いた。その音の発生源は神田とアレンで、2人は“退魔ノ剣”と“六幻”を孤児院の扉に叩きつけていた。



スカルの術によって外に出られなくなっていたので、どうにかして扉を壊し、外に出ようとしていたのだった。いくら叩きつけても傷一つつかない扉に苛立ちを募らせる神田を、奈楠とマリが宥める。



「くっそ開かねぇ!!どうしたら外に出られんだよッ!!!」
「落ち着け2人とも」
『結界だから待つしかないってさっきから言ってるじゃんよ』
「でも、マリの手の傷早く診せないと……」
「奈楠が“リカバリー”を掛けてくれているから、まだまだ大丈夫だろう」
『…………ごめん』



マリの手を見ながらうわ言のように謝る奈楠を、マリ達は見つめる。微弱ながらもマリの手に“リカバリー”を掛けている奈楠の手は、カタカタと震えている。



そんな奈楠の頭にポン、ともう片方の手を乗せたのはマリだった。マリの顔を見上げた奈楠の顔は、やはり泣きそうだった。泣くまい、と堪えている顔はグチャグチャで、酷いことになっている。フ、と笑ってマリは奈楠の頭をユサユサと撫でた。



『マ、リ……?』
「奈楠、もう発動を止めていい。もう、十分だ。……十分だよ」
『……でもさぁ……っ、あの時私がプロテクションの接続を切ってなかったらさぁ……ッ!!!』
「お前はレベル4を倒すのに必死だったんだろう?何もお前が私の指の事を背負う義務は無いさ」
『……ッ、』
「お前は十分私を助けてくれたさ。……今、私は生きている。指はないけれど、生きてるんだ。……それだけで十分だろう?」
『……ッ、そ、だね……!』



無理矢理笑顔を作ってニッと笑った奈楠に、マリも微笑む。アレンは眉を下げて下を向き、神田も何とも言えない表情をしていた。奈楠が“治癒の祈り”の発動を止めた。



「……魔導結界は内からは破れぬ。科学班を待つことだ。……“彼ら”が有能であればだが」
「てか誰キミ?」
「『…………』」



アレンがマダラオに誰?と聞くが、その問にマダラオは答えない。正体を知っている奈楠とリンクも黙ったままだ。



























「なんだよあっさり開くじゃねー」






「か………………」






「お前ら何で血だらけ……?」
「何で警部……?」
「パパ!?」
「なんじゃこりゃぁああぁあぁ!?」



ジジが結界が仕掛けられた原因である天道虫をピンセットで取った瞬間、ガルマー警部がガチャ、と扉を開けた。そのことを知らないアレン達とガルマー警部は互いに目を見開いて呆然とする。孤児院内の悲惨な有様を目の当たりにしたガルマー警部は思わず叫んだ。



探索部隊の手によって、マリ、リンク、アレン、神田、奈楠のそれぞれの手当ても終わり、レベル2によって人形化された院長や子供達も元通りになる。その様子をティモシーはじっと見つめており、院長の目が覚めれば目一杯涙をためてその安否を問うた。



「せんせぇ……いたいとこねぇ?へいき?」
「先生はとっても頑丈なのよ」



ティモシーに気付いた院長は、ティモシーに手を伸ばして安心させるようにティモシーを抱きしめる。



「へっちゃらよ」
「……せんせぇ顔あっつい!!」
「え〜〜〜?」
「子供達もスゴイ熱だ!」
「ダークマターの影響を受けたんだ!本部で診せた方が良い。本部にゲートの申請してくれ!!」
「はい!」
「びぇえええぇええええぇぇ」
「エクソシストは休んでて!ここは結界装置で封鎖してるから」
『うん、おっけ』



奈楠達エクソシストは、孤児院の玄関前にある階段に腰掛けていた。そこにはどんよりしているガルマー警部の姿もある。それに気付いたエミリアも顔を覗かせる。



「……ティモシーの父親を逮捕した時な……俺は子供が一緒にいるのを知ってて突入したんだ……。エミリアはあの子を引き取ろうと言ったが、あのオデコを見るたび申し訳なくて……、俺を恨んでる気がして……ここへ預けた。あの時俺が突入なんてしなけりゃ……」



こんな事にはならなかったのかもな、と消えそうになって言うガルマー警部を、アレンはぼんやりと見つめる。



「なんとか見逃してもらえねェか……。あの子を連れていくのは………………










俺が今度こそ傍に居て、AKUMAからティモシーを守るッ!!」
「パパ……ッ!」
「ガルマー……それは…………」



「「『ムリ/だと思う/かな?/だろ/だな/でしょう/よ/だって』」」



神田達の言葉がグッサリとガルマー警部の心に突き刺さった。その様子を奈楠は苦笑いして見つめる。



「(そんなダメ出ししなくたって……)」
「や、その心意気はくむんですけどね」
「一般人にAKUMAの相手は……」
「貴方が傍にいても、なんの役にも立たないと思いますが?」
「つか懺悔なら教会でやれ」
『言い過ぎでしょうよ(笑)』



少し驚いているようにしているティモシーだったが、何を考えたのか、照れくさそうにガルマー警部に言った。



「つーか、オレ逮捕しなくていいのかよガルマー。Gだぞ?オレ」
「呼び捨てすんな。オメーなんかちびっこ逮捕できっかよバカヤロー!!」
「……そんなら出てこっかな、オレ」
「えっ!?」
「ティモシ……ッ」
「院長せんせーもトシだしさ、チビ共もまだまだチビだし?AKUMAとか刺激強すぎんじゃん?」



ペラペラと意見する隙も無くすように喋り出すティモシーに、エミリアとガルマー警部は動揺する。ティモシーはアレンと奈楠の横に立ち、軽快に言った。



「お前らの仲間になってやるぜ、黒づくめ」
「『!』」
「オレはティモシー・ハースト9歳。イノセンスはAKUMAを武器化する“憑神”。ドカンと暴れて、やってやるぜエクソシスト!」
【よろしゅう頼んますわ】
「ただし……“タダで”とはぁいかねぇがなぁぁ」
















ようこそ黒の教団へ

(ニヤリと笑ったその顔は、何処か吹っ切れているように見えた)
prev next

back
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -