終盤戦


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33-2.生まれ変わっておいで



 コバエがぶんぶんとその傍を飛び、白いシーツはところどころ茶色に近いものがべっとりと付着していて吐き気を催しそうだった。

「う゛っ」

 特にその強烈な臭気といったらもう最悪で、ガスマスクをつけた彼等は何ともないのかもしれないがこちらは生身だ。

「最低」

 まりあが露骨に顔を歪め、口元を押さえた。

「……俺、あれが何なのか知ってるぜ。見たんだ、この家の中身」

 ミツヒロが下卑た笑みを浮かべつつまりあに呟いた。まりあは「どうせろくでもないもんでしょ」と言い興味なさそうにしていたがミツヒロは言いたくて堪らなそうだ。

「人間で家具作ってたんだぜ。ここの住人は。な、チビ」
「……」
「俺達が遅かったら、お前らもあそこの仲間入りだったんじゃねえの」

 ミツヒロが顎でしゃくりながら言うとまりあはもう見たくないのか流石に目を伏せてしまった。

「こちらは現場です、あの人気の肉まんでお馴染みの町外れの肉屋ですが……何と! 豚肉と偽って、人間の腐肉を用いて饅頭を作っていたという驚愕の事実が発覚しました!! えー、こちらの肉まんには非常に多くのファンがおりまして、現在ネットを中心に怒りの声やら悲しみの声ほか遺憾の意を表す声が飛び交っております! 食品偽装問題がこんなところにまで浸透しているという事実に我々も驚きを隠せません」

 女子アナウンサーが、走るのには不便そうなかかとの高いヒールパンプスを鳴らしながら走り回っている。

「お、あれって女子アナのミナちゃんじゃね?……何か実物そこまで可愛くねえな、ショックだわ……」

 などと失礼な言葉を吐きながら、ミツヒロは騒がしくなりつつある周囲を眺めた。

「あ、すみません! 少しインタビューよろしいでしょうか!?」
「はっ……」

 ミツヒロの周囲にどやどやとやってくるのは女子アナとカメラマン、ほかスタッフ一同である。

「今回の事件について出来れば何か一言……」
「い、いや、俺は単なる通りすがりみたいな――」

 包囲されているミツヒロからまりあが「アホくさ」、とだけ言い残して少しずつ離れていく。

「……で」

 まりあが視線を動かした。

「これからどーすんの。アンタの家族がいなくなったところで、アンタ達一家がやった事はごめんなさいじゃ済まされないけど」
「……」

 妙な空気になり始めた矢先に、ミミュー達が姿を見せ始めた。

「その子はきっともう、殺しをしないよ」

 帽子を被り直しながらミミューが言った。

「何で?」
「君が殺しをしたのは、居場所が無かったから。そうしなくちゃ君は誰かに受け入れてもらえない。そんな風に思っていたんだろう?」

 にこやかに笑うミミューはさっきまでの殺気だった様子は既に無く、元の優しい彼だった。





防護服の団体は
ロメロ監督の感染モノ映画、
クレイジーズを意識しています。
あれ結構面白いんだけどなぁ。
人気低いよね〜、というか
ロメロ監督=ゾンビの一発屋みたいな
扱い受けてるよね。
ゾンビファンからは神扱いだけど。



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