終盤戦


≫top ≫▼title back

32-3.ショット・オブ・ラブ



 またゾンビにでも噛まれて撲殺コースかな、と思いきやそうではないらしい。続けざま聞こえてきたのは……よく知るその声であった。

「ん〜〜〜!? 礼儀のなってない野郎だなーッ、君はーッ!? そうかそうか、君の家では他人に向かっていきなり罵倒を浴びせたり銃を向けてもいいと躾けているのですね! あ〜それはそれは実に素晴らしい教育をお受けだ! 君は僕に殺されても仕方のない事をしたんだよーーーーーッ!!」
「ヒイィ、ごめんなさいごめんなさい……わ、悪気があったわけじゃなくて……」

 何があったのか知らないが、まぁルーシーのカンに障るような事をしたのだろう。ルーシーに馬乗りにされているのは一般人のようであった。先の肉まん争奪戦に参加していた民衆だと思われるが……。

「君のような愚か者はこれで十人目だッ! 生かしておいてあげる代わりに、額に彫っておいてあげますね」
「な、何を……ってぎゃああ! イタイイタイ! 何をしてるんですか、ああああっ」
「……」

 ミツヒロが無言でその光景を見守るが、ルーシーは気付くはずもない。泣き叫ぶ男の首をしっかりとホールドしながら片手の釵を使って何やら痛々しい事をしている。顎をつかんで無理やり顔を上向きにさせ、男の額にゴリゴリと切っ先で文字を彫っているようだった。男のデコに血の跡が生々しく浮かんでいるのが見えた。

「『10』〜……と。はいっ、君で記念すべき十人目ェーッ!」

 歌うような調子で言いながら、ルーシーがヒュゥっと一つ口笛を吹いた。

「いだいいいっ、何でこんな目に遭わなくちゃ……」
「面白半分で暴動なんか起こす馬鹿だからに決まってるでしょう? 僕ねえ、嫌いなんですよ! 事件に便乗して悪事を拡大させたり煽るような愚図って。いや、好きな人なんかいませんかね、あははっ、あは! うははっ」

 数年前、この男と同等の扱いを受けていたのが自分だったという生々しい事実を思い出してミツヒロは内心苦笑するばかりであった。

「……みんな、もっと肩の力抜けばいいのにねェ〜。そうすれば、きっとケンカもしないのヨ。怒ってケンカしちゃうのは、必要以上に力が入ってる証拠なのネ。ししっ」

 隣でそう言って、身体に悪そうな色をした棒つきキャンディーを舐めているのはフジナミだった。何て呑気なヤツ。確かにこいつくらい、のんびりとマイペースに生きられれば世界平和も実現できそうではあるが。




確かこのルーシーのえげつない行為、
私が夢で見たんだよ。
それを使える! と思って早速
この時に流用させてもらった記憶。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -