終盤戦


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30-1.夜九時以降に食事すると内臓脂肪がつきやすくなる



「あ、ちょ、ちょっと待ってよ〜、みんなっ!」

 一足先に皆よりも前を進む創介の後ろを駆けて行くのはミミュー一同である。……が。

「……つ、疲れたぁー。さすがに長期戦はアラサーには来る〜……」

 ひいひいと息をつくのはこの中ではアラサー、もとい年長者のミミューである。壁に手を突きながら横腹を擦りつつヒィヒィと情けない声を漏らしていた……。

「おいおいオッサンしっかりしろよ! それでもあんた、街を守ってた現役ヒーローか」

 凛太郎が呆れたような眼差しを向けるが、ミミューは苦笑まじりに顔を持ち上げるのだった。

「か、勘弁してよー……君達と違って僕ももうあと数年で三十路なんだから。健康診断行ったら僕、標準体型だけど内臓脂肪多いって言われたんだよね……」
「い、いや知るかよ」
「……馬鹿にしちゃあいけないよ、凛太郎くんっ! 運動してるし、体型も普通だからって油断してたらキミも十年後は隠れ肥満なんて言われるかもしれないぞー」

 口早にミミューは言うが、やはり先の戦いから体力は相当消費していたのだろうか。やや青ざめた顔のままミミューはキリキリと痛む横腹を押さえている。

「ところで」

 そんなやりとりをしていると、静かに口を挟む影があった。

 その、眉上くらいで綺麗に切り揃えられた前髪の主の顔はよく知っている――ここにいる誰もが。だが、その精神は違うのだと言う。器だけ見れば何ら変わりはないというのだが、不可思議な事に……ミミューと凛太郎が、珍しい博物館にでも入った人間のような目つきでセラの姿をしたそいつの事をじっと見つめる。

 セラは二人から受けるその訝るような視線もものともせずに、すっと目を細めつつ言うのだった。

「安心しきっている暇もないみたいだが」
「えっ」

 同時に声を発した二人が、漫画みたいに目を点にさせつつ周囲に視線をやる。

 この一連の騒動で、ゾンビ達はまた一層数を増やしたようだ。まだ駆除し切れていないゾンビ達は唸り声を上げ、襲い掛かってくる。

 セラは刀を今度は一刀流に持ち替え、上段で構えている。極端なその構えは、何だか時代劇等で見るような大げさな構えにも見えた。溜め込んでいた息をふっと吐き出すと共に、一歩踏み込んでセラが刀を振るう。上質そうな刀が、襲い掛かってきたゾンビの腕を切断すると共に細やかな血肉を吹き上げた。

「休んでいる暇はなさそうだな、神父」
「……そう、みたいだね」

 ミミューが苦笑交じりに壁から手を放した。


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