終盤戦


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03-1.苦痛の館へようこそ



「ん……」

 目覚めるとまるで覚えのない天井がすぐ目の前に浮かんでいた。

「ここは……」

 肘を突きながら上半身を起こすとすぐさま機嫌の悪そうな声に迎えられた。

「ようやくお目覚め? お姫様っ」

 実に嫌味らしくそう告げてくるのはまりあだった。

「あ、まりあ……ちゃん」
「そうよ! ゆ〜っくり眠れたみたいで何よりだわ!!」

 両手の自由は利くようになってはいるが、それよりも一体何の部屋だろうか? 床には何やら大量の羽毛が散らばっているのだ。それと何よりも、鼻がもげそうなくらいに強烈な獣臭が漂っている……やばい、長く嗅ぎ続けていると吐きそうだ。

「……この部屋、臭い……」
「私はさっきからずーーーっとこのくっさい部屋にいたからもう慣れたけどねッ!」

 やはりまりあはひどく不機嫌で、当分はこの面倒な状態のままであろう。

「あの、まりあちゃん。……無礼を承知で聞くわ、私達一体どうなったの?」
「……攫われたのよっ! 何っっっかおかしな連中にね」

 にわかには受け入れがたい話だがこの覚えのない部屋にいるからには、つまりはそういうことなのだろう。だが、一体誰に? 残る疑問はいくつかあるのだが……。

「その、おかしな連中って言うのは」
「あんなキモデブとドチビとクソババアに殺されるなんて嫌! 死んでも嫌!」

 まりあが余程のものでも見たのか、嫌悪感丸出しの表情で首を思い切り振った。

「でも、まりあちゃん。あなたほどの性格で……、あ、いえ、あなたほどの強さで何もしないわけがないわよね。逆に何かされたの?」
「そうよ!」

 思い出したようにまりあがばっと振り返った。

「あんたが横でぐうぐう寝ている間にね! もう最低最悪ったらないわ、きったない!……あぁっ、思い出したらまた気持ち悪くなりそう〜〜! 悪臭が未だにこびりついて離れないわ! たまったもんじゃない! おええぇ〜っ」

 嫌悪感いっぱいに叫びながらまりあが身体中をごしごしと擦り始めた。

「……とにかく。私たちはあの廃墟で戦っている時、その変な連中に攫われてここへ連れてこられて監禁。で、このままだと殺される。まとめるとそういう事ね?」
「ええ、そーよ! よーーーく分かってんじゃない! だからさっさと逃げるの! 脱出してやるんだから、こんな辛気臭い場所!」

 叫びながらまりあが部屋の中を探り始めた。

「ちょっとぉ、扉も窓も無いなんて!? そんな部屋ってあるの? ていうかくっらー! 明かりも無いとかマジ……」
「あの、落ち着いて、まりあちゃん。……ライターあげるから」

 叫びだしたくなる気持ちも分からないでもないのだが自分は彼女より年上なのだ。ルーシーのいない今は、自分がしっかりせねばならない。

 ライターを投げるとまりあがそれをすかさずキャッチする。

「オイルの替えは無いから、無駄な消費は避けて」
「分かってるわよぉ」

 甲高い声で言い、まりあがライターを点灯させた。

「窓……、扉」

 壁を触りながらまりあが部屋の中を移動する。――と。

「……きゃっ!?」
「? どうかした?」

 まりあが叫びながらその場に尻餅をつく姿勢で転んだ。ライターを手にしたまま転んでくれて良かった、それを落とせばあっという間に火災事故だ。二人仲良く密室でバーベキューにはなりたくない。


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