終盤戦


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02-1.私が眠り姫だった頃



 本当だったら目覚めなくちゃいけないのだけど、まどろんだ身体がそうしてはくれない……。

 何だか、とても懐かしい感覚だった。

 およそ二年位前の自分は、ベッドの上で来る日も来る日もそうやって深い眠りの淵へと沈んでいたのだから。

 脳味噌が凍てついたみたいになって、しっかりと機能してくれないでいる。先ほどからナンシーはその夢の世界をうつらうつらと彷徨い続けていた。自分の身体なのに自分の身体じゃないかのような感覚。

――ああ……何してるのよ、私。起きるのよ。早く起きなくちゃ……

 思い起こせば戦いの最中だったと言うのに、何たる有様だ。自分には負けられないいくつもの理由があったというのにも関わらずに……、今すぐにでも目覚めたいのはやまやまなのだがもう指の先一つとして動かせないでいた。

「……透子。駄目だよ、もう起きないと」
「……」

 気のせい、だろうか。

 何だかひどく懐かしい声に呼ばれた気がしたのだけれど。ナンシーはうっすらとその瞼を開きかけ、また閉じた。

 何だかもう全てがどうでもよかった、このままこうやって目を閉じ続けていれば、目覚めないでいれば……そのまま楽に何もかも終われそうな気がするから。

 ナンシーがもう一度その心地よいまどろみに身を任せようとした時に、その声が自分を呼び止める。

「透子ってば、ホラ起きなよ!」
「……うるさいなぁ、ほっといてよ」

 まるで母親に休日の睡眠を妨げられでもしたように、ナンシーが不機嫌そうに叫ぶ。

「……あ。何だよそれ、ひっでー。無視すんのかよ〜」
「…………」

 しばしの沈黙があってから、ナンシーは夢とも現実とも取れぬその世界で目を開いた。

「嘘……、でしょ?」

 感嘆の声を漏らし、その目を見開くが、確かにそこに、変わらない姿のままの彼がいる。

「――ユウ……」

 名前を呼べば、それに応じるように目の前の彼……そう、ユウが制服姿のままでにっと笑った。あの頃のままの少年っぽい笑顔のままで。

「どうして」

 ユウはその疑問に答えることはせずに、ちょっと肩を竦めて、それからナンシーの手を取った。

「透子、こんなとこで寝てる暇なんかないんじゃないの?」

 ああ、それは……何といえば良いのやら、的確な表現なのやら。

 クラスでごくごく普通に会話でもしているかのような口調であった。本当に平和で、世界がこんな事態になっている現実を忘れさせてくれるような呑気な調子だ。





ここすき
ノーマルっぽくもあるけど
あんまし発展しないんだよな
ナイトメアの男女カプは。
まあBLサイトですからそこは……うむ。



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