01-3.死霊復活祭
ナースゾンビは首の骨でも折れているのか、首を水平に傾けたままケタケタ笑いながらメスを片手にこちらへと向かってくる。
「おい、創介。お前の好きなナースだぞ、ちょっと口説いてこい」
ぼーっとしていると有沢から背中を押された。
「ぎゃ!……ててて、てめー! あ、ああっ、アホな事を……うおわあああ! ありちゃわのバカ! 何すんのよ!」
壊れた玩具のような不安定な動きのナースとは打って変わって、白衣姿のゾンビはどうやら素早いらしい。
注射器片手に中年ゾンビが内股走りで階段を颯爽と駆け下りてくる。ゴボゴボと血液をその辺りに吐き散らしながら、中年太りの白衣ゾンビは嬉しそうにこちらへ走り寄ってくるのであった。
「……これ、案外お医者さんプレイしてるだけの夫婦なんじゃねーの」
凛太郎が笑いながら慌てふためく創介を見つめていると、その背後に着地する影があった。
「げっ」
新たなゾンビが二、三体増えたらしい。
「ちっきしょ、続々と増えやがる。一匹見たら百匹いると思えってやつ?……ゴキブリかよお前らはよぉッ!」
凛太郎が一真に預けてあったライフルを受け取りながらボルトを前後させる。
「……ということで皆々様。こういう事態ですのでさっきも言ったように一時休戦といこうか。喧嘩をしたいのならよそでやってね、ミツヒロくん」
「わかってるよ」
ミツヒロのぶっきらぼうな返事を受けルーシーが満足げに頷いた。ヒロシが立ち上がりざま二丁の拳銃を装備した。
「――本音では協力なんかしたくないところだけどね」
言いながらミミューが鼻血を拭きつつ起き上がった。
「う、うぉお神父! ちょっと見ぬうちに随分とボコボコに……ッ」
「生き残る為だっていうんなら仕方ないさ……みんな、外に車があるからそこを目指して脱出しよう」
「あ、僕たちも乗せてもらって構わないかな? 僕らの車、ここへ辿り着く時にちょ〜っとエンジントラブルがありまして。誰かさんの乱暴な運転のせいでぇ〜!」
ルーシーが問いかけるとミミューはいささか嫌そうに顔をしかめたが……。
「――分かった。……来い」
不承不承に、といった具合ではあったがミミューが了承するとルーシーがにっこりと微笑した。
「恩に着ますよ。困った時はいつでも僕達を呼ぶといい、一度だけ無償でお手伝いしますから」
冗談のつもりなのかその真意は分からないが……。ルーシーは腰の鞘から二本の釵を取り出して逆手に構えた。
隊長って言っている事と表情が
まるで違う時ってあるけど、
これって「うける〜」とか
言いながら全然うけてねーじゃねえかお前っていう
女子を見ているのと同じような気分だよね。