22-1.君は我のまぼろし
一撃で決めるべく、その二つの刃がそれぞれ繰り出される。
剣術、すなわちそれは一撃で相手を殺す為の殺人剣と呼ばれるものが多く存在しているという――セラの姿をした、それでいて別の名を語るその存在は二本の刀を操り襲い掛かってくるゾンビの群れを華麗に切り捨てて行く。
「せ、セラ……」
それまで見とれていたようにそれを眺めていた創介だったがようやく一言だけ呟くことが出来た。
言ってから気がついた、違う、あれはセラではないと。
「あいつ、どうしちゃったんだよ」
凛太郎が声をかけてくれるまでまたしばらくぼーっとしてたに違いない。創介がはっとなって振り向いた。
「な、なんかセラがセラじゃなくなって別の人間がセラになった?……みたいな」
「はあ!?」
凛太郎が何度かまばたきしながらセラを見つめた。
「……ないでしょ」
「マジだよ! セラかって聞いたら違うって言ったし、じゃあ誰って聞いたら何か別の人間の名前ゆってたしそれで」
「混乱してんだな、よし待ってろ。後で殴って正気にしてやら」
文法も何もかも知ったこっちゃとばかりに、メチャクチャに叫び散らす創介の肩を一つぽんとしてから凛太郎が言ってのけた。
「ほほ・本当だって!」
「悪いけど今はお前の冗談に付き合ってやってる暇はないからな」
「なら何で話しかけてくんだよ、お前馬鹿じゃないのッ!?」
分かってもらえないもどかしさから喚く創介を振りほどき、凛太郎は戦闘の中へと引き返していく。改めてセラを眺めると、そこにはやはり刀を駆使して戦うセラの姿があるのだった。
「畜生っ、肉まんを出せェエ!」
もはや聞きなれた奇声と共に民衆が何かを野球ボールでも投げるが如く振りかぶった。その初期動作だけでミミューは何かを察知したのだろう、振り向きざまにミミューが叫ぶ。
「……いけない! みんな伏せて耳を塞いで目を閉じろ!」
あまりにも突然だったものだから何事かと思ったが、言われたとおりに皆背を屈める。ミミューの指示からほんの数秒後、カッと青白い閃光が辺りを満たした。それこそ太陽でも目の前に接近してきたかのような焼け付くほどの光だった。
「――スタングレネードなんかどうして一般の人間が持ち歩いてるんだ!」
ミミューが帽子を両手で被り直しながら叫んだ。目がちかちかするのか、眉間の辺りを押さえながらミミューがぶんぶんと首を振った。
「今日び、あれくらい学校の理科室にある薬品だけで十分作れちゃうんだよ」
そこへちょこちょこと小走りで近づいてきた一真が、片膝をついた姿勢のままでいるミミューに耳打ちをした。
理科室って結構危険な薬品沢山
置いてあったよな。
理化学も化学もよく分からんけど
今ちゃんと勉強したら楽しそう。
というか今になってちゃんと勉強したい事だらけだわ
社会とか算数とか。数学じゃなくて算数かよw