21-2.冗談に殺す
あまりに突然の事でまりあ、ヒロシ双方共に唖然としていたがすぐにそれを割って入ってきたのは実に慌てた様子のナンシーの声だった。
「な、何か罠の解除できないかと思って色々と触ってたら……って、きゃあ!? 何これっ!」
現れたナンシーはまりあの背後からその惨状を覗き込むや驚いて叫ぶのだった。
「や、やだ……私ったら何か変なボタン――」
戸惑うナンシーだったが、まりあはそれを遮るように彼女に抱きついた。
「……ありがとお! 危機一髪だったよー、透子のお陰で助かったのよ〜ぉ!」
「へっ? そ、そう、なの……?」
勿論の事ながらナンシーにその自覚はない。わけがわからず、目を細めたままだった。
「それよりも透子! 兄上達が助けにきてくれたみたいなの」
「えっ!?」
はっとして顔を上げると、既に交戦状態となっているヒロシ一行が目に入った。
「兄上かフジナミくんなら何とか罠の解除出来るかもしれないわ、私ほか残るメンバーは暴徒の鎮圧をするわね」
告げるなりまりあが走り出そうとする。
「で、でもまりあちゃん……」
何故なのか、何かを後ろめたそうにするナンシーにもまりあはちょいとだけ振り向いて見せ言うのだった。
「……いーから! 私達、誇り高き『ランカスター・メリンの右手』でしょっ」
まりあが笑いながら、おふざけのつもりなのか握り拳を控えめな胸の前で掲げて見せた。中世の騎士でも気取っているかのようなポーズであった。
緊迫した最中でのそれに、ナンシーは絆されたみたいにちょいとだけつられ笑いをした。口元だけ緩ませながら、ナンシーもそれに応えるように同じポーズで返してやった。
それを見届けた後に、まりあが再び踵を返す。
「じゃっ、後でね!」
「ええ。――また後で」