終盤戦


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01-2.死霊復活祭



 セラもセラでその声が届いていないのかヒロシの攻撃を受けては返し続けている。

「もー、止めなんですってば。おしまいです、おしまい! やめったらやめやめやめやめ〜」
「……ふざけないで下さい、依頼者は僕だぞ!」

 ヒロシが語調を強めつつ叫び返してきた。普段の彼らしからぬ怒り気味の表情と声色からこれは相当気持ちが昂ぶっているんだと分かるが、ここはひとつ目を覚まさせてやるのも上司の仕事だろう。

「貴方の家族のピンチなんですよー!」
「……ッ!?」

 そこでピタっとヒロシの動きが止まる。

「……隙ありだっ!」

 その隙を狙ったようにセラが見事な胴回し回転蹴りを決めて見せた。咄嗟に防いだお陰なのか失神するまでは至らなかったようではあるが――。

「うっ……」

 バランスを失ったようにヒロシの身体がぐらついて、その場に片膝を突くのだった。

「あっ、卑怯くっせえ〜!」

 創介が叫ぶがセラは技アリのつもりかポーズまで決めた後、静かに言った。

「うるさい。……真剣勝負の間によそ見をする方が悪い」

 ヒロシはぶつけられたのであろう額を押さえながらゆっくりとその場から立ち上がる。

「……その通りです。今のは僕の油断が招いた結果だ」

 眼鏡を掛けなおしつつヒロシが途切れ途切れに言った。多少ふらつきながらもルーシー達の方へと向き直った――「それで? 今何と?」。

「まりあちゃんと透子ちゃんが見当たりません。この場から離脱しちゃいました、僕らの許可も無しにね」

 ルーシーが小首を傾げながら言うと追いついてきたように創介が口を挟んだ。

「えー……っと? その、トーコちゃん、ってのはナンシーちゃんの事だよな。……雛木の真似するわけじゃないけど二人でどっか行ってんじゃないの?」
「自分の意思で行ったなら別に問題はないですよ……自分の意思ならね」
「――と、すると」

 ヒロシが、もう一度拳銃を拾い上げた。何をする気なのかと一同身構えるがその銃口が向かう先は意外や意外、ルーシーだったものだから更に驚愕する。銃口をピンポイントされたルーシーが、一拍置いて「え」っと口を小さく開けた。

 一同の視線が、まるで何か名探偵に「犯人はお前だ」と推理された直後の場面よろしく注がれ始めたのであった。すかさずルーシーが両手を持ち上げてホールドアップの姿勢を取った。

「……あらら? ちょっとヒロシくん? 何ですか、怖い顔して……んっ? まさか僕が女性陣をナニをどうしたなんてあらぬ疑いをかけているんじゃあ……」
「動くな」

 ヒロシが静かに言い放ってからトリガーに指を回した。ルーシーが更に何か問い詰めようとした次の瞬間、矢継ぎ早にその引き金が引かれたものだから驚いている暇さえ与えられない。

 パンッ、と久しく聞いていなかった銃声が一つ廃墟と化した病院内に響き渡った。目を丸くしていた一同の前に、一体のゾンビが倒れこむ。

 医者のような格好をしたゾンビは白目をひん剥きながらルーシーの背中へと崩れ落ちる格好になった。

「わおっ!」

 耳を塞いでいたルーシーがその両手を解放しながら叫んだ。同時に背後から倒れこんできたゾンビの姿を見て目を見張る。

「……うわぁああ〜、僕ってば何ぁあんてうっかりさんなんだろう! 背後に迫ってくるゾンビの存在にも気がつかないなんて! ヒロシくん、ありがとう。大した腕前だ、君にどうか神のご加護があるようにっ!」

 半ばオーバーリアクション気味に叫びつつルーシーがおどけた口調で言った。

「どうも。――ですが皆様、ボンヤリしている暇はなさそうですよ」

 白煙の立ち込める銃口を下げながらヒロシが呟くと、周囲を見渡した。

「!?」

 早速ガラスを蹴破って現れたのは見慣れたゾンビが数体。

「う、上!」

 創介が叫んで二階のほうを指差すと、現れたのはナースゾンビと白衣を纏った中年ゾンビだ。病院は病院だが廃墟であるこの場所に何故医者と看護婦が巣食っているのか? ゾンビは生前の記憶を頼りに徘徊するというし、この病院が潰れる前にここで務めていたのだろうか……まあ諸説色々あるだろうが、とにかく。





廃墟とかの写真見てるとおしっこちびりそうになる
楽しくて時間つぶれる。



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