終盤戦


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14-3.正義で世界は救えない



 一同が視線を合わせるが、当然それを聞いてじゃあ止めようか、なんて話にもなるわけがない。ルーシーはもう一度マントを翻すと二階へと続く階段を上がり始めた。

「さーて。それじゃあさっさと二人を救い出しましょうね」
「待てよ! 話聞いてなかったのか、ママを怒らせたら……」

 彼の叫びも虚しく、一同は只目的のために既にその足をそれぞれ進め始めているのだった。

「……なんでだよォ〜〜」

 理解できなかった。自分はどうなってもいいっていうのか? 馬鹿じゃないのか、あいつら……? 走り去っていく彼らの姿を見つめながらトゥイードルディーが信じられないものでも見つめるようにそれを見送った。

 階段を走りながら、ヒロシがふとルーシーに向かって呼びかける。

「……すみません」
「ん?」

 振り返ったルーシーは、珍しく神妙な顔つきのヒロシにほんの少しばかり気が付いた。

「何ですか? そんな思いつめた顔して……珍しいですね」

 最後の一言は余計かと思いつつも口走ってしまう辺りがルーシーらしいと言えばルーシーらしい。

 ヒロシも別段気に留めた様子も無く首を横に振った。

「――いや。大したことじゃ、無いんですけど」

 そもそもヒロシからこうやって接触してくる事事態が珍しかったりするのかもしれないが。黙ってルーシーが言葉の続きを待っていると、ヒロシは少し視線を伏せつつ言うのだった。

「その……、僕の考え方は間違っているのでしょうか」
「んん?」

 ヒロシが唐突にそこで足を止めた。壁に手をつきながら、何やら考え込んでいるようである。不思議に思いながらもルーシーは耳を傾ける。

「――僕は父の教えを守るためにここまでやってきたつもりだった。大義を成し遂げるためなら、多少の犠牲は厭わないと思っていた。……躊躇いはほとんどなかった」
「……」
「だが、本当に父が教えたかったのは……そんな事、だったのかと、時々……思うんです」

 少しだけ自信に欠けたようにそう話すのは、何か理由があるのだろう。ルーシーはしばしの間そんなヒロシの珍しい姿を観察するように眺めていたが、やがて少し肩を竦めて笑う。

「うーん。それはそれは……とっても難しい質問ですねえ」
「……」
「答えるのには時間がかかります。これが済んだらじっくり教えてさしあげましょう」

 そう言ってヒロシの肩を叩くとルーシーが笑った。

「でもまあ、ヒロシ君はヒロシ君のままでいいと思いますよ。僕は、ね」

 腑に落ちなさそうにしていたヒロシであったが、うじうじと悩んでいる暇もないことに気が付いたのか再び歩き始めた。

「……後でまりあにも聞いてみます」
「うん。そうするといい」

 ルーシーがにっこりと笑ってヒロシの背中を押してやるのだった。




あれっ!? 隊長優しくない!?
何か後々の展開のせいで(ネタバレなので伏せるけども)
隊長はヒロシに対して冷酷な印象が拭えないね。



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