13-2.人間狩りの王
目をやれば、下半身を失った男が半身だけで這うように動いていた。
「きゃあああ!?」
視界に入れるなりまりあが絶叫し、その場にへたりこむ。窓にしかけられていたギロチンの刃によって下半身をもがれたのは予想がつくが、何故そうまでしてこの屋敷へと侵入しようとしているのか。
その答えは、半身男の口によって判明した。
「にく、まんん」
「……はっ!?」
「肉まんを、よこせぇえええ〜」
再度の「は?」が口を割って出るより先に、押し寄せてきた侵入者たちが次々とトラップの餌食となっていく。
「俺の肉まんだァア!」
トラップによってだろうか、全身ニードルが突き刺さりハリネズミのようになった男が意味の分からないことを叫びながら突っ込んでくる。
「に、肉まんってェ!?」
ワケもわからずに身構えていると、ハリネズミ化したその男を背後からショットガンでズドンと撃ち抜く刺客がいた。崩れていく男の背後、白煙の立ち昇る二連式ショットガンを両手持ちして不敵に微笑んでいるのは太ったおばさんだ。
「遠くからはるばるやってきたのに、アンタなんかに渡してなるものですかッ! 全部私の肉まんよ、誰にも渡さないんだから」
流石はバーゲンセールで勝ち抜いてきた百戦錬磨の主婦といった具合か。その手腕たるや右に出る者等おるまいと言わんばかりの佇まいではある、が……。
「――どうやら一般の人々のようね」
ナンシーが髪をかきあげながら言うと、まりあがたじろいだ。
「そ、それは分かるんだけど……何なのよ、何なのよっ! 一体全体、んもー! んもー!!」
が、うろたえているのは彼女達だけではなかった。
その光景を見守っていたモニタールームのママも、予想外だったのだろう。
「な……何ですってェエ……」
わなわなと震えながらママは椅子の上から立ち上がった。
「こんな事になるなら外にもトラップを仕掛けておくんだったわ! あたしとした事があたしとした事がッ!……いいわ、こうなったら私が動いてやる、皆殺しだ、皆殺しだ、人間狩りだ!!」
ママは引き出しを開けると、中に入っていた出刃包丁を二本取り出した。刃を重ね、かちゃんかちゃんと鳴らすとその切れ味を確かめるようにベロっと舐めた。ママの舌に赤い筋が一本入る。
それからママはマイクに向かうと、電源を入れシャウトし始めた。
『……おい、お前らァア〜〜〜〜〜!!』
屋敷内にアナウンスがかかった。下の階にいた創介達も、当然その声を聞いていた。その手を止め、声のする方に皆視線を持ち上げた。
屋敷中に響き渡るその声で、尚もマイクアナウンスは続けられる。
『これより、人間狩りを執行するッ! 狩りを行うハンターは勿論ここにいる貴様ら愚か者全員よ、オホホホホホ!……いいかあ、ルールは無用! 今からアンタ達は殺し合いなさい! 情け・躊躇は一切なし! 使用武器に制限もなし! 殺し合い、生き残った者だけに肉まんを与える事にするわ、オホホホ! 勝ち残ったハンターだけが生きる糧を手にする、これぞ広大な自然界において生存するための絶対的なルール! オホ、ホホホッ、オーホホホホ! いいわね、あたしが行くから最後の一人になるまで血みどろの交戦続けてなさい! やる気のない奴はあたしが片っ端から処刑にしていくわ!』
なんともはや、無茶苦茶なゲームの始まりだった。
当然のことながら目を点にさせそのアナウンスを聞いている創介やナンシー達とは打って変わり、肉まん目的に殴りこみにきた民衆たち(今や暴徒と化しているが)は目をぎらぎらと輝かせはじめた。
「ウオオオオ! 勝つのは俺だ〜〜〜〜!」
生首を抱えて絶叫する男の叫びを皮切りに、狂人どものゲームの火蓋は落とされた。狂信者達はそれぞれの武器を手にお互い殺し合いを始めた。
その様子を満足げにモニター越しに眺め、ママがニタニタと笑う。
「……男が死ぬぞ、女も死ぬぞ、年齢なんか関係ない。ガキも老害も皆くたばるんだ、それと家畜も全て!……オホホホホ、みんな死に物狂いで殺り合え〜〜〜!」
ママは二本の包丁を手にし、部屋を後にした。
半身男の元ネタは
映画の方のスイートホームに出てくる古館さんだったり。
あれ、未だにトラウマなんですが。
古館さんには申し訳ないが彼見るたび思い出して怖くなるww
ゲームの方にも「はんしんおとこ」って出てきましたよね。
一度死んだら二度と復活できないっていう
怖いし超難易度高いゲーム。
死んだら死体がそのままそこに残るし。ドット絵怖ぇー!
ところでスイートホームを知ったキッカケがまた
DSを初めて買った時に中古だったのですが
本体に入ってた名前が「まみやふじん」。
何かのキャラかと思って好奇心で調べたら
このスイートホームのキャラだったらしく
怖い絵がたくさん引っかかってしまい
怖い思いをしたことがあります。
うらむぜ前の持ち主よ…