終盤戦


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12-2.ヘリコプター・ボーイ



 何と言うか、ここで中に誰が入っていても驚きようがないと言うか……一同が大して身構える気配もなくその光景を随分と冷静に見守っていると、ルーシーは片手でそいつの鉄仮面を引き剥がした。

「あらっ」

 顔を出したのはいたってごく普通な見た目の青年だ。――いや、普通とは言えないかもしれない。青年はその両目の焦点が合っていない上、だらしなく半開きになった口元から大量のよだれを垂れ流している。

 青年はルーシーを見るなり、ジャングルにでもいそうな鳥類を思わせる叫び声を上げた。音量も音程も明らかにおかしいその声に一同が耳を塞ぎたい衝動に駆られた。

「……うンおお! 殺すっ! 殺してやるゥっっ!!」

 唾を吐き散らしながら青年は手足をばたつかせ絶叫する。 

「――何だ、単なる狂人か」

 さも興味なさそうに言い、ルーシーは兜をぺっと投げ捨てた。立ち上がりながらルーシーが昔でも思い返しているのか、何となく遠い目をさせつつ言うのだった。

「ちょっと前に何度か見たことあるんですよ、こんな風に頭のおかしくなったヤツを何人かね。話が全く通じないんですよ、残念な事にね……」

 他の鎧連中も難なく組み伏せてからヒロシが呟いた。

「けど、何故にそのような人達がここにいるんでしょうね」

 何だか頭痛がしてくる思いがした。創介が少々やつれ、げんなりとした顔のまま視線を上げるとそこに立っていたのは子どもだった。……いや、と、考えてから思った。果たして子どもか、あれは?

 ぽかんとする創介の前に、その『多分』子どもはつかつかと早足で歩き出したかと思うと……いやはや、走っていた。その短い脚で、全力疾走だ。

「お、おお……おおおお!?」

 近づいてきてハッキリと分かったがその子どもは異様に短い手足をしているというだけで顔そのものは結構年を食っているようにも見えた。分厚い眼鏡の向こう側に見える目は、恐ろしく冷たく、そして据わっていた。

 創介の叫びに同調するようにその子ども――トゥイードルディーもまた人語ならざる意味不明の絶叫を上げながら突進してくる。その片手にはオモチャみたいな、けばけばしい色合いのナイフ。

 まさにキチガイに刃物、といったところか。トゥイードルディーはちょこちょこと小走りながら案外と早いペースで一気に距離を詰めると創介めがけて包丁を振りかざした。

「だわわわわわわッ!?」
「ギィイイイイイイイィイイーーーーッ!」

 身長差などは、まるで意に介さず。
 トゥイードルディーはその場で、恐るべき跳躍力でジャンプしてみせたかと思うと、さっと創介の首元にしがみついた。そのまま勢いあまってか、創介も受け止めきれずにその場に背中から倒れこむ。

「……あああああ、痛ったぁあああっ……、何っ……ヒッ!」

 そこには創介が危惧した通りに、刃物がかざされていた。慌てて手のひらでそれを防ごうとすると切っ先が突き刺さってえらい事になってしまった。

「ぇぎゃっ!?」

 肉の裂かれる感触がはっきりと分かって、痛いとか思うよりまずその生々しい感触に驚いた。傷口を裂いて進入してくる刃物の冷たさが何よりも恐ろしかった。

「やめてやめて……うわあああ!?」
「ママの商売を邪魔する悪人め、悪人め、悪人め……成敗してやる成敗してやる! この場所が無くなったら俺たち兄弟はなあ、生きてく場所がないんだよ! えぇ!? だから消えちまえ〜〜! お前ら全員、まとめて……」

 何事か喚き散らしながらトゥイードルディーはそのナイフの柄を両手でしっかりと握り締めた。

 それから、竹とんぼでも飛ばす時みたいにして手のひらの中でぐるぐると擦り合わせるように回転させ始めた。当然、今しがた刺さっているナイフは更にゴリゴリと創介の手の中をドリルみたいに掘り進んで行くワケで……今度こそは本当に、痛かった。いやそれはもう、痛いどころの話じゃないのだけれど。

「いぎゃあああああああああ! い、いぃいいいだぁああ゛あっ!!!」

 しかし、創介の上に乗っかったその重さが途端に軽くなったかと思うと手の平に突き刺さっていた痛みも、ずぼっと引き抜かれた。……これはこれで痛いのだが。





いってぇええええ!!!
痛いのを見るのは平気な方かと思ってたけど
目ん玉系とまんまん異物挿入系と
ガラス系だけはいでぇえよぉおおってなる。
あとチン子切断も無理かも。



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