終盤戦


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12-1.ヘリコプター・ボーイ



 悪夢めいた屋敷の中を進んでゆくと、それまでどこかゴミゴミとし雑然としていた部屋の中、進むにつれて次第に綺麗に片付き始めていくのに気が付いた。

「無駄に広い屋敷ですねー」

 ルーシーがホールのようなその場所から天井を見上げつつ呟いた。

「……今度は逆にスッキリとしすぎていますね、閑散としていると言いますか」

 その周囲に警戒をしているのだろう、ヒロシが意味深に言いそれから視線を動かし始めた。一同が拭い去れない違和感に駆られていた時であった。カタカタと、飾ってあった時計や花瓶たちが揺れ始めたのは。

「な、何!?」

 さっきの一件で泣きを見たのか、もうすっかりビビリ腰の創介が叫ぶ。びびりきったその顔めがけて、上等そうなラベルのワインボトルが物凄いスピードを伴って飛んでくるのが見えた。が、それはすんでのところで顔の横を横切ってゆく。ボトルは創介のすぐ背後、壁へと命中したのちに粉砕してしまった。

「ぽ、ポルターガイストっていうアレですかコレ」

 創介が庇っていた頭を持ち上げつつ呟いた。あんぐりとその口を開いて怪異を見守っていると、何やらがしゃんがしゃんと物々しい音が響き始めた。

「やれやれ……ゾンビに続いて今度は幽霊が相手か。参ったな」

 苦笑を浮かべるのはミミューだった。……で、謎の音の正体は何なのかと言えば、こちらへ向かってその足を進めてくる異様な団体のものである。暗がりからがしゃんがしゃんと音を立てて現れたのは西洋の甲冑の飾り……なのか、それとも中に誰か入っているのか。

 が、この際どうだってよかった。大事なのはそのヨロイの騎士達が自分達に明確な殺意を持って動き出しているという事だ。

「ゾ、ゾンビなのあれも!?」

 当然のことながら創介の叫びはまるで意味を成さなかった。西洋の騎士は本物であろうその剣を構えガシャガシャとこちらへ向かって走り出した。

「あっはははは!……やるぅ〜〜〜、痺れるぅううッ!」

 ワケのわからない事を言いながらルーシーがすちゃっと釵を構えた。二本の釵をその手の中で華麗に躍らせながら、ルーシーは振り下ろされた剣を受け止めて見せた。

「な、な、何だよアレは! 『さまようよろい』かよ! ホイミスライムでも連れてくるか、えぇ!?」

 凛太郎が喚きつつライフルを構えようとしたがミミューが慌てて止めた。

「駄目だよ、跳弾でもしたらどうするんだ!」

 おまけに騎士は一体ではない。二体、三体とそのフルアーマー軍団は姿を現した。持っている武器もまさに中世ファンタジーのようで、槍に斧と様々だったりする。

「まさかゾンビ達と共に中世の騎士が現代に蘇った、ってか!? そんな骨も残っていなさそうな奴が?……どこまで馬鹿なんだ、この世界!」

 凛太郎に続きこちらもギャアギャアと吠え始めたミツヒロの隣でセラが冷静に、観察でもするようにしげしげとその騎士軍団を眺めた。

「……」
「――おや。貴方も不思議に思いましたか、竹垣?」

 ヒロシが静かに問いただすと、セラが視線をちらと寄越した。

「だから、僕は竹垣じゃないと何度言えば……まあ、いいよ。――うん、そうだね。あれの正体が何なのか分からないけど、とても訓練された者の動きとは違う。何も考えずに闇雲に武器だけ振り回していて……ゾンビに近いけど、ゾンビのような愚鈍さも無いし」

 言い終えてセラが再び観察するような眼差しを甲冑たちに向けた。今しがたルーシーと交戦している騎士はその上質そうな剣を滅茶苦茶に振り回している。

 それは確かに素人の戦い方、といえばいいのか。狙いを正確に定めもしないまるで洗練されていない動き方であった。あんな高価そうな剣、振り回して傷でも付けたらどうするんだろうとは余計な心配だろうか。

 ふと斧を持った奴がこちら目掛けて奇声と共に突っ込んでくる。

「あれを殴るのは少し覚悟がいるな……」

 セラがぽつんと言い、それから片足を半歩下げる。ほとんど乱戦のようになったその場所で、初めに決着をつけたのはルーシーであった。

 ルーシーは二本のその釵を駆使し、騎士の握り締めていた剣を引っ掛けた。武器を吹き飛ばされた騎士はうろたえ、当然焦り始める。後はもう、完璧にこちらのペースである。

 転ばされた騎士はその重たさゆえ立ち上がることも出来ずもんどりうっていた。

「……さぁ〜〜〜ってとぉ、このままタダで帰すほど世の中甘くないんですからね……っと」

 可笑しそうに言い、ルーシーはそのひっくり返った亀みたいにもがいている鎧に近づいていった。剣を手繰り寄せようとするその腕を容赦なく蹴り飛ばしてからルーシーは鎧の前にしゃがみこんだ。




ゲームだったらバランス崩れそうよね、
隊長とヒロシを入れたら。



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