06-3.17歳の斜陽
極度の緊張をきたした時の症状だ、まさか好きな相手に好きというだけでこんな状態になるなんて。正直初めての事かもしれない。あれ? 俺って慣れてるように見えて実は恋愛経験少ないんじゃねえの??
「げっ」
有沢がいきなりのように悲鳴を上げた。
「創介、お前今屁しただろ……俺の聴力はごまかせないぞ」
「マージかこの野郎ッ!」
ミツヒロが嫌悪感丸出しでその身を許される限りによじっている。本当に嫌そうな顔をしている。当たり前だが。
「す、するつもりは無かったんですがちょっと肛門が緩んで……」
「最悪だお前! ちょ、マジで最悪だよこんな密室で! 殺す気かよぉ」
ミツヒロが滅茶苦茶に叫び散らした。やや大袈裟に騒がれている気がしないでもないが、ヒロシに至ってはもう顔を伏せてしまっている。
「窓開けたらどうです〜? ちょっとだけでも」
ルーシーが他人事のように言ってくるのでミツヒロは更にムカついて仕方が無い。
「……馬鹿」
言いながら、セラは創介から身体を離した。
「意気地なし。……お前ってもっとはっきりした奴だと思ってた」
「!?」
セラがぷいっとその顔をあちらへ向けた。完全に試されていたんだろうか、そして自分はその選択肢をミスしてしまったのだと――、それから創介は背中を向けてしまったセラを見つめながら思うのだった。
「女子か……」
異臭騒ぎのせいでセラの捨て身も粉砕してしまったようだが、創介とて何も感じていないわけじゃない。
――いや、だって男好きになるの初めてだし……
言い訳するわけではないが、創介にとってこんな思いをした恋は初めてだったかもしれない。
「……」
セラの背中を見つめながら創介が何と声をかけていいやら分からずに俯くのだった。
「畜生もう降りたい! 俺もうこの車降りてーんだけど!」
「ちょっとさっきからうるさいよー、ミツヒロくん。君って、君自身が煙草臭くて仕方ないのですが人の匂いとかにはすごく口うるさく言いますね。そういうのことわざでは何て言うか知ってますか? はい、三、二、一!」
ルーシーが助手席から叫びつつミツヒロを指差した。
「うるせえ! 潔癖なんだよ俺は、ほっとけ!」
「正解は人の振り見て我が振り直せでした! はーい、スーパーヒトシくん没収〜〜!!」
ルーシーは一人ではしゃぎながら手を叩いている。この変人ばかりの集まりが、本当に前回の事件で世界を救うために暗躍しただなんてにわかには信じがたくて仕方が無いのだが……。
屁は生理現象だし出ちゃったものは
仕方ないと思うんだけど
風呂に入らない人の体臭による
スメルハザードはマジ勘弁だよな〜