終盤戦


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17-2.悪魔は取り引きに応じるか?



凛太郎がまた一度にっと笑ってから、紙袋の中へと手を突っ込んだ。

「……!?」

 そして取り出されたのは数枚の写真だった。

「そ、それは……」
「そうだ。屋敷の周囲をうろついていた猫の隠し撮り写真だよ。お前に懐かない事で有名だったんだよなあ、ナオ?」

 もはや勝ち誇ったように笑っている凛太郎に、有沢もミミューももはや訳が分からないといった風にその光景を只唖然として見守っている。

「な、何でそれを……ッ」

 ルーシーが打ちのめされたみたいにぶるぶると震えている。

「俺は手懐ける事に成功したんだけどなあ〜。だから色んなポーズ取ってくれたぜ、あいつ」
「なっ、なっ……!」

 凛太郎がその写真をちらつかせるように言い放つとルーシーの顔は目に見えて動揺しまくっているのが分かった。

「そ、そんな馬鹿な……何だこの茶番は!」
「ナオお兄ちゃんはね、無類の動物好きなの。特に猫には目がないんだよ」

 しれっとして一真が言うのだがそんなのアッサリと信じられる筈もない……。

「猫会議してる現場も押さえたぜ。これは中々レアだよな〜……」

 にやにやと凛太郎が言うと、ルーシーは瞬時にしてその脳内に溢れかえる愛らしい猫たちの姿を思い描いた。生唾を飲み込んだ。

 いよいよ堪えきれなくなったようにルーシーが叫びだす。

「み、見せて! 一枚だけでいいから……」

 なりふり構わずに飛び込んでこようとするルーシーだったが凛太郎が指を突きつけてそれを制した。

「おっと! 取り引きに応じるのか? 応じないのか? 答えを聞いてないぜー」

 ルーシーがぐっと息を詰まらせた。

「ひ、卑怯だぞ〜……そういうやり方はぁああ……」
「卑怯もクソもあるもんかい! こちとら命がかかってんだぞ? さぁ、どーすんだよ。いらないっつーんなら別にいいぜ。これは燃やす、うん。燃えるゴミだな?」

 凛太郎がライターを取り出してみせる。決断を迫るようにその火が点いた瞬間に、ルーシーが素っ頓狂な声を漏らした。先ほどまでの狂人の影はどこへやら、驚くほど情けない顔と声をしている。

「……ああっ! 何て……何て事をするんだ! 鬼畜、外道! 反吐にも劣る所業! 見過ごせない、見過ごせないぞぉお、これは!!」

 ルーシーは頭を抱えながらその場に蹲るとガシガシと髪を掻き散らし始めた。しばらく何やら意味の分からない言語で喚いていたがやがて倒れこむと悶絶し始めた。

 オモチャをかってもらえなくて駄々をこねている大きな子どものようにも見える。……実に異常な光景だ。有沢にその姿は見えないが声だけでも情景は何となく思い描ける。もはや言葉を失うより他ない。

「どうする! どうするんだ僕っ! 仕事を優先すればいいのかそれとも自分の欲望を優先すべきなのか!? 公私を明確に区別するべし、が僕の営業方針だろう!? でも、でも、これは酷すぎる! あんまりだ! ちくしょう〜! ああああーっ、酷いぃーッ!!」

 めちゃくちゃに髪の毛を掻き毟りながらその場でごろごろと悶えている成人男性。そのマントが埃やら砂利でまみれて行くのを見守りながらミミューは呆気に取られているのだった。

「何? 何か騒がしいけど〜」

 空気を読まずにつかつかとやってくるのは雛木だ。雛木は片耳をほじくりながらその場に颯爽と登場する。

「……ひ、雛木」
「僕のほうは片付いちゃったんだよね。歯応えのない相手だったよー、美しさも強さも僕のほうが上というワケだね。そこで伸びてるよ……ってあれ?」

 言いながら雛木が背後を振り返るが、その姿が見当たらない。

「どうした?」
「あれ。さっきまでそこで気絶してたと思うんだけど……おっかしーな」

 その不穏な言葉に有沢がしばし沈黙する。

「雛木。……彼女は?」
「彼女? ああ、あの裏切り者?」

 言いながらすぐに雛木が周囲を見渡した。

「そういや見当たらないね。女二人が。どこ行ったんだろう? トイレか? 女ってトイレ近いしね〜」

 冗談とも本気とも取れぬ雛木の言葉に、有沢がすぐに向き直った。

「――おい! 一旦この勝負お預けだ!!」

 凛太郎とルーシーの間に割って入るなり有沢が叫んだ。




で、出た〜WWWWW
不思議な事件が起きると
X−FILEのテーマソング流す
報道番組〜WWWWWW

トリックか金田一のテーマという
パターンもあるな。



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