終盤戦


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12-1.ゴー・トゥ・ヘル



「何よ、このチビ! おかま野郎っ、露出狂のホモ! ケツ掘られて死ね、マザーファッカー!!」
「うるっせぇんだよぶすぶすぶーす! 顔面土砂崩れの化粧崩れッ! 見ていて哀れになるくらい貧乳のくせして!」

 互いの髪の毛を引っ張り合いながら売り言葉に買い言葉、もはや完全に女子どもの取っ組み合いの喧嘩だ。

 しばらくそうやって玩具でも取り合うような、遊んでいるかのような喧嘩が続いたが、まりあが雛木の顔にビンタをしたことから方向性がまた変わったらしい。いつしかそれは平手のかまし合いへと発展したようだ。

「痛いわねっ!」
「そっちこそ!」

 キイキイと鳥類でも連想させるかのような叫び声を交えつつ二人の喧嘩は益々醜くなっていくのであった。

「いってーんだよバァカ!!」

 とうとう雛木がスナップを利かせたその一撃をもろに食らわせた。パチーン、と小気味良い音を響かせたその平手は今までのどの平手よりも一番効いたのだろう。

 もろに食らわされたまりあは足元と、視界をふらふらさせながらやがてその場にどてーんと崩れ落ちた。

「はあ……ったく。手こずらせやがってこのメスガキが」

 ぺっ、と唾を吐き捨てながら雛木は鼻血と唇を切った時に溢れ出た出血をごしごしと拭った。

「でも、ま……これで強さも美しさも僕の方が勝ちというわけだね」

 勝ち誇ったように笑い、雛木がその艶やかな黒髪をファサっとはためかせた。

「ま、ちょっとは骨のある相手だったけど所詮はお子ちゃま!……この僕の敵じゃないね。強い、おまけに可愛い! あー、最高最高僕って本当パーフェクト!」

 加えて高飛車な高笑い。雛木がパタパタと手の平で扇ぎながらまりあを放置してつかつかと歩き出した。気分がいいので有沢でも助けてやろうか、といった具合だろう。

「あっりさわくー……ってエッ!?」

 見れば金髪の美青年が、地べたに這いつくばり頬を踏まれながらビシビシとしばかれている。この踏みつけ方がまたトランプルと呼ばれるSMのアクションの一つであり、そしてそれを行使しているのが一真だから謎である。

「じょ、女王様ぁん。この豚めをもっと踏んづけて罵ってやってくださぁい……」

 踏んづけられている美青年はその端正な顔を間抜けに崩し、鼻の下を伸ばし、もうほとんど恍惚とした顔で快美の声を洩らしている。

「誰こいつ……」

 雛木がうわっと顔をしかめながら辺りを見渡すと、ウサギのマスクが放置されていた。それで、ああ、本体か――とピンときたものの……もう一度ちらと目をやる。

「この、薄汚い雄豚め〜〜! このこのぉ〜〜! ブーって鳴いてみな、ブーッて!」

 せっかくの雛木好みの美青年ではあるが……あれじゃあ美形も台無しだ。金髪碧眼のイケメンは涙を流してその責苦に大喜びしている。はぁ〜、と雛木がわざとらしくため息を吐くもののすっかり盛り上がっている彼らは気付く訳も無い。


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