終盤戦


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11-2.ソドムとゴモラ



 転がったままのロッドを拾い上げるともう一度暴れ始めた。その端正な顔も髪もめちゃくちゃに振り乱し、狂った美形は最後の抵抗だと言わんばかりにそのスタンガンを無茶苦茶に振り被る――。が。

「えいっ」

 ものともしない一真が手にしていたロープをムチのようにしなやかに操った。

「きゃんっ!?」

 パシーン、と弾かれてストライカーはその場に女の子よろしく可愛らしく転んだ。一真がしぱーん、とムチを華麗に操り、床を一つ叩きつけた。

「……さっき、面白い豆知識を教えてくれてありがとう。電気は動物の調教にも使われるって。じゃあ、僕からもお礼に一つ教えてあげるね」

 一真が人差し指を唇に宛がい、そして小首を傾げながら可愛らしく言った。

「極端にマゾヒストの人ってね、同時にサディストの面も持ち合わせてるんだそうだよ。これは心理学的に立証された事ではないんだけど、僕がまさにその人間だからさ……近々事実として発表してもいいと思うんだよね」

 飽くまでもにっこりとほほ笑んだ顔のままで、一真が鞭……いやロープをもう一度しならせる。女王様顔負けのウィッピング技術に、兄である凛太郎までもがあんぐりとしている。

「は……はひ、」

 怯えて尻餅のまま後ずさりするストライカーに、一真はその手にしていたロープをパァン! と当てて見せた。

「ぎゃっ」
「頭が高いよ頭が! ほーら、もっと僕に敬意を払うんだよ。この豚野郎っ!」

 有沢も凛太郎もぽかんとするほかなかった。一真が実に生き生きとした……そう、ちょうど自分がいたぶられている時とほぼ同じくらいに輝いた目をさせてストライカーを鞭でシバキ倒している。

「ひ、ひいい! 痛い痛い! やめてよー!」
「やめてください、だろ! このー、このーぉ!」

 きゃっきゃと、好みの玩具で遊んでいる時のような子どもみたいな顔で一真は手にしているロープをぶんぶんと振り回した。

「……、何が行われてるかはっきりとは分からないが、音声だけでも……うむ」
「お、俺にだってよく分からんよ。……一真ってこんな奴だったのか?」

 血の繋がった身内に分からないのならそりゃ誰にも分からない。

「ヒーッ、ヒー……ってあれ? き・傷が一つも残って……ない!?」

 弄ばれていたストライカーだったがその事に気が付いた様に上半身をのっそりと持ち上げた。一真はにっこりと微笑んで頷くのだった。

「うん。どんなに激しい責めを行っても傷を残さないのは……SMの基本、ううん、プレイの相手への礼儀だよね」

 一真がそう言ってロープをしならせた。

「ま、マジか……そんな上級な特技まで持ってるなんて――」

 今まで各下だと思っていた実の弟相手に、あの凛太郎がごくりと唾を飲んでいる。有沢はもはや何に驚けばいいのか、いや、驚いたら負けなのか……とにかくまあ、唖然とその光景に固唾を飲んでいた。




実はすんごいテクニシャン一真。
凛太郎は只の厨二レベルだったことが発覚する。
悲しい世界



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