12-2.ゴー・トゥ・ヘル
「んー……」
まりあがごしごしと目をこすってその場からむっくりと起き上がった。気絶した時間はそう大した長さじゃない。さすがはルーシー仕込み、女の子といえど耐久性抜群だ。
「あれ? そういえば何でこんなとこで寝て……」
言いかけた時、背後から口を塞がれた。
「もがっ!!」
足をバタバタさせるがあまり意味は無い。それなら、と護身術を発動させようとするが向こうの身体が極端に小さいせいなのか顎を狙った裏拳が当たらない。当たっても手ごたえが無い。
「もががが! もっっがー!」
「ようし、捕まえたぞ!……おい、でぶ! そっちの準備はどうだ!」
――何!? 誰よ、こいつらはっ!?
創介たちの仲間だろうか? いやその線は薄い気がする。そんな情報があるなら事前に透子の方から連絡が――まりあが視線を何とか動かして背後を窺い見ると、恐ろしい程巨体の……あれは人間か?――子どもか大人かもよくわからない、でっぷりと肥った醜い巨漢がいる。
巨漢は、その身体とは正反対に華奢な透子の身体をひょいと持ち上げた。
――透子……っ!?
まりあが叫ぶも、実際にはモガガ、としかならなかっただろう。自分を捕まえているのは小柄な方だと言われる自分よりももっとちっちゃな……多分、子ども、――で……その得体の知れない子どもは玩具みたいなナイフを突き付けながら言うのだった。
「くそでぶ! 躊躇なんかしてる暇はないんだ! とっとと連れて帰るんだぞ! ぼさっとしてねーで早く!」
「ウ……」
巨体がゆらり、と揺れた。ナンシーは……透子は気絶したまま、ぐったりとして気付く筈も無い。
「んー! んんんーっ! んー!」
「チッ、これだから女は嫌いだ! やかましいったらありゃしないんだ、もう」
戦いに夢中な男達がこの事態に気付く筈もなく……毒々しい、外国のお菓子を思わせるケバい色合いをしたナイフをちらつかせながらトゥイードルディーがずるずるとまりあを引きずっていく。
やがて夕陽が沈み始め、辺りは再び夜の闇が支配する世界となる。ゾンビ達の血のように赤い目達が廃病院の周りに集まり始めた――。
数少ない女性成分が連れ去られていく!
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