13-1.ほのかなる希望
結局、ミミューが割って入る事でその場は収まった? ようだった。
創介と有沢は鼻血を垂らしながらもお互い肩を抱き合っている。よろめきつつも立ち上がった。
「な、なあ――お前ら一体……」
セラがひきつった笑いを浮かべつつ尋ねると創介は親指をグッと上に向けて差し出した。しかも笑っている、ご丁寧にも鼻血のオプション付きで。
「なんら問題無いぞ! なあ、有沢」
「は、は……そうだな」
創介だけならまだしも有沢まで笑顔すら浮かべてそう言うのだから益々何がどうなのやら訳が分からなくなる。
「……な、なあ本当に一体……何があったんだ?」
セラが心の底から不思議そうに尋ねかけるが、創介は垂れ流しの鼻血をそのままにまたニっと笑うだけである。
「何でもねーよ! これが男の友情の育み方ってやつよ〜。女とは違うやり方ですね」
その発言は答えになっていないというか、更なる混乱を招くだけなのだが……。言葉自体は理解出来ないが言っている事そのものは正しい事なのだろう、創介と有沢は肩を互いに組みつつやけに笑顔を浮かべている。
「え、えっとぉ……コホン」
ひとまず、とミミューが割って入る。
「――それでね、僕らの結論だけど……」
「俺らはセラについていくからな!」
「ちょっと創介くん、まずは僕の話しを聞いてくれる?」
すかさずミミューにたしなめられてしまった。挙手のポージングでやかましいくらいの主張をした創介であったが大人しくその手を下げた。
「結論からいって……。セラくん」
セラが伏せていた視線を僅かに持ち上げ、こちらを見た。
「創介くんと有沢くんはさておきに……ここにいる僕らは君を最後まで護る事で、意見が一致している」
「……! し、しかし――」
驚き目を見張ったセラに、ミミューは言葉を続ける。その足を進めながら、やがてセラの前で腰を降ろした。
「君は人類を救える存在となるかもしれない」
「……」
「だから尚の事、君を死なせるわけには行かない……ましてや、君のその体質に目をつけて悪用しようなんていう連中だって全く出ない訳じゃないでしょう。そりゃ勿論……、セラくんの強さは知っているけれど、それでも対抗する仲間は多い方がいいですよね」
ミミューがそこで一旦息継ぎをする。
「と、言う事で。僕らはセラ君が目的を達成するまで護衛致します。オッケー?」
「……。それはとてもありがたいのですが――僕からも言っておきたい事が少しだけ、ある」
セラが、伏せていた視線を持ち上げた。
「……正直言って僕は……、自分の体質が本当にその――神父の言うような、奇跡的と言える体質の持ち主なのかハッキリ言って保証は持てない」
「と、言うと?」
「僕自身に噛まれた記憶は無いからだ。只、自分が何らかの原因でウイルスを保持しているという事だけは知っていた。……遺伝子的なものかもしれないし突然変異なのかもしれないし、そこは分からないんだ」
目を閉じながらセラが首を小さく横に振った――「だから」。
「だから、僕を守る事が人類にとって幸か不幸かは……僕には責任が取れないよ」
言いながらセラがうっすらと瞳を開ける。