中盤戦


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12-3.非情の?デスマッチ



 有沢は今の衝撃によって口の中が切れたようだ、唇の端からつーっと鮮血が一筋零れて来た。有沢はそれを指先でくいっと拭い取った。

「は……ははっ、どーだ! 見くびってやがるからだぞ、こんちくしょう! 思い知ったかドシロートの予想の斜め上を行く恐ろしさを!」

 創介はゼエゼエと肩で息を吐きながら、威張るようにして言い放った。有沢は何を思っているのか、血を拭った姿勢のままで茫然としている。

「……笑える」

 吐き捨てる様に言い、有沢は一つペッと血の溜まった唾を吐いた。

「おー、来いよ来いよ! 相手んなったるわボケーっ!」

 調子づいて創介が叫んだ矢先に、有沢は足元のダンボールを蹴り上げた。それが創介の腹元に命中するやいなや、創介はまた一つ呻いて蹲った。

「んげほぇっ!」

 派手に咳き込んでいると、有沢は扉の前にまで移動して更に創介を挑発するように言うのであった。

「どうした? もうお終いか?」
「……っな、わ・け・ね・え、だろうがっ! クソァ!!」

 腹を押さえながら創介がよろよろと立ち上がった。

「……来い」

 有沢が人差し指を立て、くいくいと指先を曲げた。半笑いのその表情からもよく分かるように、分かりやすい挑発であった。創介は立ち上がりざま叫びながら有沢めがけてまたもやタックルでもかまそうと言うのだろう。

 全力疾走で突っ込んで行くが、今かというところで有沢に扉を勢いよく閉められた。当然、創介はバコーンとその扉に顔面を思い切りぶつけられる。

「にゃ゛っ」

 二度に渡って顔面を強打し、とうとう創介は鼻血を吹きながらその場に背中から倒れた。鼻を押さえながら創介はもんどり打っている……。

 そんな哀れな彼を見下ろしながら有沢が一歩前へと進む。

「どうだ。まだやるか? この遊び」
「……ギブ!」

 有沢の問いかけに、すかさず創介が情けない声を上げながら叫んだ。

「もうイヤ! こんな痛いの耐えられないよ、無理、リームー! 分かった、お前の勝ち。俺の負けでいい。お前には勝てない!」

 何ともまああっさりと……さっきまでの勢いはどこへやら。ちょっとでも、創介に意外とタフというか根性のある奴だという認識を抱きかけた自分を愚かだと思った。有沢はふーっと呆れたようにこれ見よがしなため息を吐き、肩をすくめた。

「――分かった。もうお終いだ、お互いこんなバカみたいなのは」
「ああ。それでいいよ、俺がアホだった、超絶アホだった」

 創介は謝罪を繰り返しながら手を差し出した。

「ようし、ようし。あれだ、和解の握手しよう。……有沢も手を伸ばしてくれ」
 
 有沢はため息交じりに、その手を握り返そうとする。

「……なーんてのは嘘ピョンでしたー! 喰らえチンコー!」

 途端に創介は有沢の腕を掴んで引き寄せ、彼の金的……いわゆる股間を狙って爪先を伸ばした。卑怯極まりない。

「っっっッッつ!?」

 有沢が声にならない悲鳴を上げ、股間を押さえ膝から崩れ落ちる。同じ男としてその痛みと苦しさはよーく分かるがゆえに、少々の罪悪感が芽生えてしまった。

「油断する方が悪いんだぞ! 勝負の世界にルールは無用ッ!」

 言い訳するように叫んで、創介が蹲る有沢をビシっと指差した。

「……こ、の、ッ」

 掠れた声を上げながら有沢はよろよろと立ち上がる、腰をトントン叩きながら有沢は必死でその痛みに耐えているみたいだった。





この腰とんとんって、野球とかで
股間にボール命中した選手がたまにやるけど
何なんだろう? 楽になるのかな? と思ってたら
単純にキャンタマを下へやってるだけだった。
バキの独歩ちゃんが空手家は金玉を蹴られないように
ボールを動かして体内にしまうのが基本だって
言ってたけどそんなん本当に出来るのかなw



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