中盤戦


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08-1.やめさせないと



その少女――透子は、チラシの切れ端を片手に失踪した同級生達の噂が囁かれるその辺りを制服姿のままでうろついていた。透子は手にしたチラシに目を落とすと、もう一度それに目を通し始めた。

 ところどころ血の付着したそのチラシは、くちゃくちゃに折れ曲がっていて、もうほとんど読み取りが困難だったのだけど何とかして透子はこの情報が欲しかった。記載されている番号にかけても繋がらないし、あれこれネットで調べてはみたのだけど有力な情報は得られる事が叶わないままで。

「ランカスター・メリンの右手……って。何だろ、ふざけた団体なのかな?」

 まだ幼い自分には、一体どれが正しい選択なのか判断もつかない。彼、もとい一年前の事件でいなくなってしまった(世間的には死んだという扱いになっている)ユウを探し出せる方法なのか。何たってごくごく普通の平凡な女子高生なのだから当然そんなツテだってないし、頼れる人脈もない。ならどうするべきなのか、と思い立ってはみたものの。

――とりあえず可能性のありそうな場所を虱潰しに調べていく事くらいしか思いつかなかったけど……このチラシが落ちている場所なら、出会える可能性くらいはあるんじゃないのかな?

 この場所で、突然姿を消した先輩達の話だって気になった。事件以降、大人達――もとい世間はこの事を禁忌めいた扱いをしているようだったし、『受験や学校生活に不満があり、単に家出したのではないか』なんて勝手な結論を導かれている有様だった。

 先輩とは友人を通じて何度か面識があったし、そりゃあ本人達が人に言わないだけで何か深い悩みを抱えていたのかもしれないけども、けどそんな簡単にふらっといなくなってしまうような人達じゃないと思う……数回話しただけで簡単に判断できる事ではないかもしれない、けど。

 透子の推理が正しいかどうかは別として、この失踪事件とこの団体、もしかしたら何らかの繋がりがあるのかもしれない。先輩達も彼らに会いたくてここへ来て、それで何かの事件に巻き込まれた――とか。大人達が頑なにこの場所に自分達含め、近隣の住人を近づけたがらない理由も、そこに関連しているのではないか、とか、あれやこれやとネットで情報を仕入れようとはしたものの結局自分の目で見るのが一番だという事に結論づいた。

 透子は有刺鉄線を潜り抜けて、その鉄くずや廃車が山積みになったスクラップ置き場へと足を踏み入れた――何か、オイルか汲み上げられた汚水か、強烈な匂いがツンと鼻を突いてえずきそうになったが何とか堪えて足を進める。禍々しい空気が漂っているのは気のせい何だろうか。

 中に行けば行くほどに、その匂いはより一層濃いものとなった。鼻の奥から肺の中にまで深く侵入して来ようとするその強烈な臭いに透子は袖で口元を覆い隠した。

 備え付けられた簡易トイレの前を横切ると、赤いスプレーのようなもので何か落書きがされてあるのが目についた。

『よゆーー』
『全然怖くねえしなめんなファックユー』
『2011.8.13. VIPからきますた』

……そういえばこの辺りは心霊スポットとしても一部では有名なんだって、兄から聞いた事があった。心霊スポットや廃墟を探索する時に、一番怖いのは幽霊や怪現象よりもまず人間だという事もその時聞かされた。いわゆるヤのつく職業の人達が何かの取引に使っていたり、たちの悪いヤンキーがたまり場として居座っている事もある……。

 むしろそっちの方が恐ろしいと力説されて、まさにその通りだと思った。足元の酒の瓶をローファーの靴先で蹴ってしまい、透子はそれでも前に進むしかないと中へと入ってゆくのだった。

――何か……私ってバカだよね。女で、それも女子高生で、ろくな装備もしないでこんなとこウロついて……

 勿論何かあった時の為に唐辛子スプレーを持参してはいたけど(痴漢撃退用に、と姉が持たせてくれた)最大の危機を想定すると大勢の男相手にこれ一つって……危機感のなさもいいところだろう。

「……引き返した方がいいのかな」

 そんな事を言い出せば、そりゃあもう初めからその通りだったんだろうけど――。





THE★加筆ッ
透子ちゃんの知らざれる過去の事

最近油いっぱい食べると頭痛するようになった
ハンバーガー+ポテトとか
欧米的にジャンクなものをたくさん食うと
マジで頭痛と吐き気直通コース



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