中盤戦


≫top ≫▼title back

07-4.あいにくの雨で



益々困惑し、創介はそれまであったような苦手意識も忘れてそれどころか対抗するかのような態度を見せていた。むしろ、その曖昧さに納得のいかない妙な苛立ちが込み上げてくるのだ。

「何だよ、一体?」
「――質問を変える」

 飽くまでも落ち着いた声のままで、有沢が言った。それが益々こちらの混乱を誘うのだが……創介はとりあえず黙って、その続きを待つ事にした。

「セラの事はどう思っているんだ、お前?」

 再度の「は?」が口元から零れそうになっていた。いや、実際には出ていたのかもしれない。その質問の意味……というか質問に込められた意図が分からずに創介は更に戸惑う。

「い、いやどうって……どういう」
「ハッキリ言おう。……おんぶに抱っこで自分を守ってくれる、都合のいい存在。という風にしか考えていないのか?」

 一息に言ったその言葉。創介はしばし言葉を失い絶句していた……思わず「ふざけんな」等と喧嘩腰に言い返したくなったが、有沢は決してふざけてはいないのだろう。こいつの表情を見ればそれはよーく分かる……けど――創介は眉根を吊り上げた。

「んな筈ねえだろ。何でだよ?」

 こちらも思わず荒っぽい口調になってしまう。勿論、有沢は怯える様子すら見せずに更に言った。

「――お前は誰にでも優しくするな」

 やはりこいつの言っている事は含みばかりで、てんで理解できない。こやつは一体俺に何を言わせたい、俺がどう答えれば満足する……創介は腹が立ちつつもどこか探り合うような構えを見せた。

「そりゃ、冷たくするよりはいいだろうよ」
「……。そうだな。それは、そうだ」

 一旦そこで言葉を切り、有沢が更に続けた。

「だがな、優しさばかりで人が幸せになれると思うなよ。お前のその無自覚な態度が、……を、時に追い詰めている」
「何?」

――何を追い詰めてるだって?

 よく聞きとれなかったので聞き返そうとするが有沢はまだ何かを言い続けた。

「とにかく、だ」
「お、おいちょっと勝手にまとめに入るなよ。俺はちっとも理解してねーんだぞ!」
「その気も無いのに優しくするような真似は止せよ。――可哀想、だろ」

 自分が一体何をこうも責められなくてはならないのかまるで分からない。だけど、何かとんでもない事をしでかしているようだ。……そう、全く思い当たらないわけでもない。セラにはたっぷりと甘えてきたし、それこそおんぶに抱っこでここまでやってきたのも事実だったから。

 創介は何か、後ろめたさのようなものが急激に込み上げて来て急に弱気になって行く自分を感じた――駄目じゃん、俺。

 有沢の非難の全てを理解したわけではないが……創介は何も言い返せなくなる。

「俺は」

 そんな創介に向かって、有沢が再び口を開く。

「お前のそんな部分が……俺は大嫌いだ……何で、こんな奴が」

 それは悪意の込められた言い草というよりは、悔しさ……半ば嫉妬のような言い方に聞こえた。

「なっ、何ですって!? そ、そんな事言うならお前〜っ、こっちだって嫌いだかんな!」

 対抗するように創介が叫ぶが、有沢はふっとため息を一つ吐くばかりであった。そして、いきなり背を向けたかと思うとすたすたと去っていくのだから……たまったもんじゃない。

――なんだァ、あの野郎!?

 創介はムカついてムカついて仕方なかったが、とりあえず抑え込む事にした。一体自分が何をしたと言うのだ。悪くない。自分は悪くないぞ。何か知らんが、多分。




三角、いや四角関係だな。
雛木さんも含めると。
この恋愛に決着は……!
割とすぐつくんだけどね。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -