07-1.あいにくの雨で
とりあえずこんなもんで防ぎ切れるのかどうか知らないが……、と即席のバリケードを組み立てた。
そしてミミューは、そこへ更にピンと張った状態の糸をくくりつけている。いわば防犯装置代わりなのだろう、シンプルかつ原始的なものだ。その半径に誰かが入ったら、この缶が落ちて音が鳴る……という単純な仕掛けみたいだった。
「ま、おまじない程度だろうけれどね……」
ミミューがよっこいせ、と腰を上げた。
一同は比較的安全そうな、鍵のかかる倉庫へと辿りつくことが出来たのであった。中には業務用の食品なんかの入ったダンボールや雑貨なんかが無造作に置かれていた。申し訳ないとは思いつつも、やはり有り難いのが本音であり……そこから少し今日の晩御飯を頂戴する事にした。
「ごめんなさい、っと」
創介が財布から数枚、お札を取り出してダンボールの中に忍ばせている。こんな事をしてもまったく無意味というか、自分の罪の意識を和らげるだけにしか過ぎないのだけど――まあ気持ちの問題だろうと言い訳しておいて、ちゃっかりその食材をいくつかもらう。
雛木がもう空腹に耐えられないと騒ぐので、とりあえず持参してきた乾パンと水をあげた。当然、非常食だ。決して美味しいものではないが何とか雛木の口には合ったみたいだ。一応、黙ってその味気ない乾パンをもそもそと食べてくれている。
創介がふと室内を見渡した。皆の輪から離れるようにして、ぽつんと座っているセラに、真っ先に目がいった。
そして創介が小走り気味に近づく。
「――なあ、セラ」
座って、空マガジンに弾を詰めているセラに創介が呼びかけた。セラはいったん手を止め、無言で顔を持ち上げた。相変わらずジト目気味のその瞳とぶつかった。
「お前さー、無理してねーのー……」
「は?」
唐突なその問いかけにセラは勿論、きょとんとしてその丸い目を見開いた。
「あ、いや。してないならいいんだけど。何となくな。うん。何となく」
自分で言っておいて、ワケがわからなくなってしまった。創介はばつが悪そうに鼻の下を人差し指でちょいと掻いた。それでから鼻を啜った。
「んー……と」
眉根を潜めながら、創介がセラの隣に腰掛けた。