中盤戦


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06-2.999999



デパートの中は話声一つとしてせず、代わりと言っちゃ何だが『雨に唄えば』が流れている。


――I'm singin' in the rain
(僕は雨の中で歌っている)


――Just singin' in the rain……
(只雨の中で歌っているだけさ……)


 虚しく響き渡る店内BGMに、創介が思わず苦笑する。

「う〜ん……一人くらい生存者がいてもおかしくないんだけどもなあ。おーい、誰かいないのー」

 創介の叫び声はホール内にエコーがかって響いた。誰か隠れていた者でも出て来るかとおもいきややっぱりし〜ん……、としたまんまだった。

「わびしい……」

 独り言を述べながら創介は傍らのマネキン人形(ちなみに同じくらいの身長だ)の肩によしかかるようにして手を置いた。何の気はなしに振り返るとバッチリ目が合ったので、何となくニカッとしておいた。特に意味はない。

「あ、雷……」

 遠くでゴロゴロと雷鳴がする。どうやら本当に雨が降ってきたみたいだ、このBGMはあながち間違いでもない。しかしながらこの前ほどのような土砂降りは勘弁だ――あまり降らないといいけどなあ、と一同がしかめっ面をしていた矢先に鋭い雷が一つ落ちた。

「うわぁっ」

 カッと閃光が轟き、続いて足元から掬いあげられるような轟音。

――かなり近いぞ、今の……

 それを証明するかのように次の瞬間、モール内の電気が一斉に消えた。ブレーカーが落ちたのか、はたまた局地的な停電か。いずれにせよデパート内からは光と、一切の音――が消失した。

 いつの間にか外は日が落ちてこんなにも真っ暗だったのだ……急に視界を奪われて、勿論皆戸惑った。

 突然のように襲ってきた暗闇と、無音の世界。

「うわっ!? 何、くっら……」
「停電、みたいだよ。いーい? 皆、離れちゃ駄目だからね〜」

 ミミューの声がすぐ傍で聞こえてきて、ひどく安心した。

「全員いるよね? はい、点呼」
「またかよ! 点呼すんのスッキだな〜、あんた。……俺はいるよ」

 と、ぶつくさと答えるのは創介。

「……僕も」

 この愛想の無い暗い声はセラだろう、続いて双子の返事があって、有沢、ナンシー、雛木と続いた。

「よし、ちゃんといるね。全員確認とれたところで、はいっ! 懐中電灯〜」
「んもー。初めっから出してよね〜、それ」

 創介が苦笑混じりに呟くと、ミミューはすぐさまライトを二つ取り出した。

「僕と、あと一つは……じゃ、創介くんが」
「おう」

 とりあえず近くにいたせいなのか懐中電灯を渡された。素直に受け取ると創介はスイッチを入れる。

「おー。なんっか肝試しみたいでワクワクすんねえ〜、うひょー」

 言いながら創介が懐中電灯の灯りで、自分の顔を下から照らした。おまけにほとんど白目を剥いてさあ笑えと言わんばかりにこちらを見て来る。……一同、笑うどころか呆れ顔である。

 まずは雛木のあからさまなため息を受けた。

「……置いて行くぞ」

 セラの冷たい声に一蹴されるように言われてしまった。……何か言ってくれただけマシかもしれない。ミミューに至っては見向きもしていない、普段は優しい癖にこういうところでドライなのだ、この人は。

「ぬ、ぬぅ……、手ごわい」

 負けたように創介が懐中電灯を降ろした。

「何と比べてんだよ、何と」

 凛太郎があざけるように言うと創介は頭を掻いて、素直に懐中電灯でモール内を照らした。





お気づきだろうか。
凛太朗が少しずつ明るくなっている事実に。
創介とは年齢が近いのもあってか
普通にその年頃の子同士の馴れ合いが
出来るようになってきていますね。
でも一真はやや闇の濃度が濃いめなので
ちょっと時間がかかりそうだな



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