05-6.渡る世間はキチばかり?
数秒遅れてから、今度は子ども達の空気を劈くような悲鳴が巻き起こった。
「ぎゃあああああああんっ!」
「うわぁああああああああん!!」
やがて泣き出す子達までいた、怯え、皆その場から散り散りに逃げだし始めた。
「う、ウフフ。子ども達が涙まで浮かべて騒いでいる……お、俺もついに人気者だなぁ……ピ、ピカチュウやジバニャン超えて子ども達の人気になる日も近いな……フフッ」
もうすっかり自分の世界に引きこもってしまっているのか、子ども達が怖がっている事などには気付いていない。
「もう、ストちゃんったらぼーっとしないの。こっち来て」
ルーシーがぱんぱんと両手を叩くと怪しすぎるウサギ男がはっとしてこちらを見た。
「あ、あ、あ、あっ・ど、どどっドーモすいません、ルーシーさん……」
近づいて来たその不審すぎる男の腕を掴んで、ルーシーはそいつの頭を撫でた。
「みんな〜、紹介するね。僕らの隊に、新しく加わることになったニューフェイスのストライカーくん。ほぉーら、挨拶して」
「だだ、団員募集の紙を見て、にゅにゅっ、入団しました。ふ、ふふ・ふつつかな者ですが宜しくお願いします」
「仲良くしてあげてねー」
そう言ってストライカーと呼ばれたウサギ男はぺこっと小さく頭を下げた。
「マジかよ、聞いてねえって……」
ミツヒロが苦笑混じりに呟いた。
「ていうかこんなおかしな見た目の怪しいヤロー……」
「人を見た目で決めつけるのは一番よろしくないですよ、ミツヒロくん。僕は人の外見云々を言う奴がとぉっ〜〜ても嫌いなんですよ〜。例えば僕の寝癖を馬鹿にするのはいいですけど、ミツヒロくんの目つきの悪さを馬鹿にするのは許せませんねぇ。その違いといいましょうか」
「な、何言ってるのかよくわかんねーけど……その、何なの? こいつ」
ミツヒロがストライカーを指差しながら尋ねた。
「ですから、新入りのストライカーくん。ねっ?」
「は、はい! な、な、何か役に立てたらと思いまして……よ、宜しくお願いします!」
気さくな声で挨拶されたがミツヒロの視線はその身体にべったりと付着した血飛沫から目を離せない。修一とて同じである。
「はぁ……つうかさ、その着ぐるみ何? すっげー怪しいんだけど、それ……」
躊躇う事無くミツヒロが直球で尋ねる。何だかそれは触れてはならない禁忌のようにも思えたがストライカーはばっとその首に手をやってから言うのだった。
「み、みんなに愛されるキャラになりたくてですね。被ってみたのですが、へ、変でしょうか?」
「そーりゃ変だろ! つうか何で頭部だけ……どうせ着るならフルで着ろよ」
「そ、それだと動きづらくなっちゃうし……」
「頭だって重たくて辛いだろ! あ、もしかして素顔隠してるつもりか? それは」
「ドッキーーーン! 何で分かったんですか、その通り、まさしくその通りなのです!」
ミツヒロがため息を洩らしながらそうかい、と他人事のように呟くのだった。
「……まあ知ってるヤツではなさそうだからどうでもいいわ」
半笑い気味にミツヒロが腕を組みつつ言った。ルーシーはストライカーと肩を組みながらそんなミツヒロを見てニコっと微笑んだ。
「うん。そう言ってもらえると彼としても助かるみたいよ。ねっ、ストちゃん?」
「はははっは、はい。出来れば俺の素顔については触れないで下さい、お願いします! 殺しますよ」
その不穏な語尾にミツヒロがばっと正面を向き直ったが、ストライカーとルーシーは顔を見合わせて笑いあっている。
いろもの新入生・ストちゃん登場でした。
被り物キャラは一人は欲しかった。
それも顔のみが被り物の奴が。
こういう奴が殺人起こしまくるB級映画で
面白いのが見たいな。