05-5.渡る世間はキチばかり?
ミツヒロが持って来てくれた買い物袋の中には大量のプリンが入っていた。
ルーシーのリクエストで、ラパン・ブランという店の(そういえばまりあが御贔屓にしていた)、何でもこっちでは有名なプリンなんだとか。
子ども達はというと、もう大喜びでプリンに飛びついてくる。ルーシーはついでに買ってきてもらったのであろうイチゴ牛乳の紙パックを片手に、プリンを頬張る子ども達を眺めている。
「ミツヒロくん、これお金。面倒だからお釣りいいや。お遣いどうもね」
そう言って人差し指と、中指の間に挟まれた状態で差し出されたお札を受け取る。
「……なあルーシー」
「ん〜?」
ミツヒロが受け取った札を長財布にしまいながら呟いた。
「いいのかよ」
「何がです?」
一旦ストローから唇を離してルーシーが問い掛けた。
「家族、なんだろ。――置いてってもいいのかよ」
少し離れた場所にいる修一を顎先でしゃくりながらミツヒロが言う。告げた言葉こそ短かったものの、その視線は何だか様々な思いが入り混じったような、何ともいえぬ色合いに満ちている。
「おや。ミツヒロくんまでそんな事を言うのですか」
ルーシーがすっくと立ち上がった。
「じゃ、僕はここで待っててもいいですかね。依頼は君達に任せて」
「い、いやそうなっちゃうと困るけど。まあ、あんたがいいならいいか」
慌てるミツヒロにルーシーが意味深にふふっ、と笑った。
「そういえば、ミツヒロくんにまだお話してないことがあるんですよ」
ふっと思いだしたような言い草をしてルーシーが呟く。
「? なんだよ。……どうせまたロクな話じゃないんだろうけど」
「それがそうとも限りませんよ。あ〜、いや……どうでしょうかね。それは少し分かりかねますが……」
極めて曖昧な言い方で、ルーシーは立ちあがりざま首のストレッチをし始めている。
「ンだよ、勿体ぶってないで教えろよな」
「まあまあ。彼も中々シャイボーイですからねえ、そう焦らせないでやってくれませんか」
――彼?
引っかかるその言葉にミツヒロが眉根を潜めた。ルーシーが辺りをきょろきょろと見渡してから一旦咳払いをした。
「そろそろいいかな」
独り言のように呟いてからルーシーが何やらいずこかへと向かって叫び始めた。
「おーい、到着してるんでしょう? 出ておいでよ、美味しいプリンがあるよー」
「……はっ?」
誰に向かって一体何を叫んでいるのか意味が分からずにミツヒロが怪訝そうに顔をしかめた。ルーシーが呼びかけると、ややあってから、扉の裏からひょこっと顔を覗かせる奴がいた。そいつの顔に見覚えは無い。というか、顔が分からない。覗いているのはウサギのぬいぐるみだった。ぬいぐるみ、というかそれは着ぐるみの頭部だろう。
長い耳と、そのコミカルで愛らしい顔を覗かせながらウサギはじっとこちらの様子を窺うように覗きこんでいる。
「……。何だあれ」
ミツヒロがぽかーんとしながら呟くと、その可愛らしい見た目に子ども達は興奮したらしい。
「わぁあ〜〜っ! 可愛いー!」
「うさぎちゃんだー!」
きゃいきゃいと子ども達ははしゃいじゃいるが、ミツヒロと修一は異様なものでも見つめるような視線をぶつけるしかない。だって不気味なんだもの。
その佇まいといい、全貌が拝めず目的不明な挙動も全てが不気味でしかない。ルーシーの知り合いなんだろうか。ていうか日本語は通じるのか、あれに……ゴクンとミツヒロが戦慄したよう唾を飲み込んだ。
「どうしたんだい? 早く入っておいでよ。プリン食べたいでしょ〜」
ルーシーがプリンをちらつかせて手招きするが、その不審なウサギ野郎は顔だけを覗かせたまま扉の前でじっとしている。よく見るとウサギ野郎(そもそも男なのか女なのか分からないが)は、ぶるぶると何か震えているようだ。そしてくぐもった声で何かをぶつぶつぼやいている。
「ふ……っ、ンフフッ。こ、子ども達が俺を見て喜んでいる……こ、子ども達に好かれるなんて……嬉しいなぁ、えへ、エヘヘ」
声質からどうやらそれは男であると判別がついたが、それがますます不審さに拍車をかける。
ミツヒロと修一は依然、不審者を見る目つきのままそのウサギ男をじっと見つめていた。着ぐるみの下では今どんな顔をしているのか分からないが、そいつはとにかく喜んでいるらしい。
子ども達の黄色い歓声を受けて、ようやくウサギ野郎はその身を一歩乗り出した。途端、子ども達の顔から笑顔がさっと消え失せた。辺りが静まり返ってしまったが、自分の世界にすっかり陶酔しているんであろう、ウサギ野郎はそれに恐らく気付いちゃいない。
ウサギ男の首から下は、着ぐるみではなく生身の人間であった。着ぐるみを被っているのは頭のみらしい。少しだけ着崩された白いシャツにネイビーとブルーのストライプのネクタイを締めて、その下は黒いスラックス。いわば普通のサラリーマンのスタイルだが問題はそこじゃなくてそのシャツにべっとりとこびりついた返り血のような血染みであった。
ついでに血飛沫は着ぐるみの口の辺りにまで及んでいる。酸化しているのか少し茶色っぽい色をしている、リアルな血痕がこびりついているのだ……ミツヒロと修一の怪しむような視線はもう確信的なものに変わっていた。
PRGツクールあるある:
・キャラクターと最初の町作って飽きる
・むしろキャラクターのステータス振り分けで
早くも集中力欠如の悪寒が走る
・スイッチ、変数とかいう知識で詰む
・一から作るのが難しいのでサンプルRPGをいじって満足
・全部のステータスがカンストした敵を低い確率で投入
・テスト戦闘で全能力カンストモンスターと全能力カンスト
最強装備の仲間を戦わせる。
・妄想しているうちが花だと知る