前半戦


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11-1.宇宙からの色



 ぞろぞろとやってきたその大群に、セラがまずすかさず前へと躍り出た。

「挟み撃ちにされる前に戦力を割こう、僕が何とか引きつけながら創介達を探すよ!」
「あ、ちょ、セラくん! そんな危ないって……」

 ミミューが慌てて引きとめようとするのも聞かず、セラは駆け出した。セラは階段を駆け下りながら迫ってくる軍勢の注意を自分へと引き付ける。

「セラ!」

 有沢が振り返りつつ叫んだが、すぐ眼前に迫りつつあった紙袋の人間――もとい、村とは関係のない犠牲者の成れの果てなんであろう連中が平鍬を振りかざしてくるのを、有沢は刀で受け止めた。がきん、とひときわ大きな金属音が響いた。

 狭い通路は限りなく行動が制限されたが、逆手にとって有効な手段もある――ナンシーが神父に向かって叫んだ。

「――神父様! こんな時こそ惜しまずに散弾銃を使うべきでしょう!」
「で、でもぉ〜、ゾンビ相手なら平気だけどこんな人っぽい動きするバケモノ相手にショットガンってちょっと良心が痛まないかな!? せ、戦争ではショットガンは使えないって規定があるんだからね!」
「そ、そんな事言ってる場合じゃないでしょう!? それにもう人じゃないんです、あれはっ!」
「うぁあああ駄目だぁああ、同じ理由で僕は動物型や顔のついた食べ物が食べられないんだよ、金太郎飴とか! 何か可哀想で!……って、あらら?」

 線引きがよく分からなくなってくるが、これ以上パニックになる前にとナンシーはミミューが担いでいたそのポンプアクションのショットガンを半ば強引に奪うと手際よくそれを腰だめに構えてブッ放したのであった。やかましい銃声と共に、足元に衝撃がやってきた。

 反動でよろめいたのをすかさずミミューが支え、辺りには火薬臭い香りと、一瞬にして焦げ付いた肉と血の嫌なにおいが混ざり合い、あとは多少のオイルのようなものが漂い始めた。狭い通路にばら撒かれた散弾の威力は凄まじく効果的だったようだ、周囲一面が一瞬にして血の海と化した。

 ミミューに抱きとめられながら、ナンシーも自分で自分に驚いているのか熱を持ったショットガンを撃った直後の態勢のままで、しばしのよう茫然としていた。それから少しだけ、悪い夢から目覚めた直後のような眼差しで背後のミミューを振り返る。

「お、思い切ったねナンシーちゃん? いや、お陰で助かったんだけど」
「――覚悟を決めた女の怖さなんかこんなものよ」

 何よりミミュー自身がびっくりとしていたのだが、受け答えした時のナンシーは既にいつものクールな様子に戻っていた。
 ナンシーはまだ熱いそのショットガンをミミューに押し付ける形で突き返し、ミミューも慌ててそれを受け取るのだった。

 一方で、全速力で駆け抜けてきたセラであるが、これでも脚にはそこそこの自信はある。捕まらない程度に距離を保ちつつそのただっ広い廊下を逃げ進み、やがて分かれ道に突き当たり足を止めた。

 振り返るとやはり例の村人達がわけのわからない奇声と共にこちら目掛けて突き進んでくる。セラはすぐ傍にあった、バルコニーへと走った。円座になっているそこはどうみても行き止まりではあるが、村人達はセラへと向かって武器を手に向かってきた。

 木片を手にしていた紙袋の男がそれをふりかぶるがしゃがんで避け、セラは背後のフェンスに手を伸ばしたかと思うとそれを握り締めたまま器用に柵の間を潜り抜けた。紙袋男が負けじと木片を振りかざすが、セラは鉄柵からは手を離さないようにして身を翻す。木片が鉄柵に当たり、小気味良い音を響かせた。
 セラはその状態から上段めがけて蹴りを繰り出し、見事に一発でノックアウトさせた。続いて木製の棒を振りかざしてきたバケツをかぶった男の攻撃もしゃがんでよけ、再び柵の間を潜り抜けて円座の上に滑り込んだ。柵を使ったまま、ポールを掴んだ勢いを利用して蹴上がってそいつも沈める事に成功したらしい。

 まだまだ自分を追いかけてくる声が止まないので急いで踵を返し、セラは今度は目の前に広がる螺旋階段を駆け上がった。しつこく追いかけてくる村人めがけ、セラは壁に下げられたランタンを蹴って落とすと階段を上がってきていた連中の目の前に落下したのだった。

 こぼれたオイルにすぐさま炎が燃え移り、またその明かりの強さもあってなのかすぐにそいつらは怯んで見せた。

「……よし」

 しばらくはこれで足止めが出来るだろう、とセラが再び歩き出そうとした瞬間、再びあのスマホが鳴り響いた。
 モッズコートに手を入れて、セラは近くの部屋へと飛び込んだ。廊下で立ち話というのも何だか気が引ける、セラは室内に飛び込むと扉を閉めたのだった。



神父女々しいぞwwww
同じ様な事を言っている人が
探偵ナイトスクープにもいたな。
顔のついた食べ物がどうしても食えないっていう。



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