02-2.暴走する二人の青春
「このアホ神父! 大概にしとけよッ!」
ミミューが話しかけるのを遮るように創介がその身を乗り出した。ミミューの背後から腕を伸ばすとその首に回して締めあげ始めた。
まんまチョークスリーパーというヤツだろう、ミミューは苦しそうにその回された腕にしがみついた。創介だけでなくいつの間にやらセラも加わっているのだから手に負えない。
「ただでさえ命の危険があるってのにこーーーーんな危ないガキんちょ共を連れてくなんて納得できるか! 反っ対、断固反対ッ!」
「……そうだ、流石に創介に賛成。もっと言ってやってくれ」
「ぐぐ、ぐるじ……ちょ、ちょっとホントくるし……」
流石に可哀想になってきたので創介が一旦その手を解放してやる。ミミューはハンドルに手を突いてゼーハーと必死に息継ぎをしつつ、額に浮かぶ嫌な汗を拭う仕草を見せた。
「ちょ、ちょっとは手加減してくれよ、本当に苦しかったんだけども……ハアハア……」
「アンタが変な事抜かすからだろ、アホかっ!」
「このパーティの最年長は僕だぞ、年長者の指示に従うのが人生のルールってなもんだろう」
ミミューはネクタイを締め直しながら呟いた。まだ何か言いたげに食ってかかろうとする創介は無視して、ミミューは再び双子の方へと向き直った。
「君達の顔、どこかで見覚えあると思ったよ。……、君達は『天使達の家』の養子じゃないのかな?」
双子がほとんど同時に反応を示した。ぴくりと眉根と目尻を持ち上げて、ミミューの方を見つめた。
「はぃ?」
創介は目を丸くしながらそのやり取りを眺めたが、構わずにミミューが続けた。
「……違うのか?」
「ちょっと待って、あの、その天使達の家って何」
創介が微妙に挙手のポーズを取りながら口を挟むと、隣でセラが口を開いた。
「詳しくは知らないけど、ふもとの山頂にある屋敷の事だろう。元は由緒ある商人の家だかで馬鹿みたいに金持ちの屋敷だったんだってね……、それで、身寄りの無い子どもを養子として引き取って育ててたんだとか」
「そう。表向きはそんな聞こえのいい文句を謳っていたが実際には引き取った子ども達を、己の欲望の為だけの道具にしてたのさ」
「え、え?……ちょっと、よくぼうってそれ何?」
創介はもう初めからよく分かっていないらしく完全に部外者のような気持ちでいた。
「僕は正直詳しくは知らないんだが……事件が発覚して、あまりにも惨たらしい出来事だったから報道規制がかかったっていうのは聞いたよ――でも近場での事件だからね、世間はひた隠しにしようとしてたけど周辺では結構騒ぎになっていた」
セラが付け足すかのようにそう言った。
「え……なに。俺、全然知らないんだけど。そんなコトあったっけ」
「……僕はテレビ持ってないけど、それなりには知ってたぞ。何せ地元の事件じゃないか」
何だか呆れているかのような口ぶりでそう言われてしまった、ひょっとして自分はものすごく無知な発言をしているのだろうか……と創介が今更思っても仕方の無い事を考えた。
「あ、あの。無知さを承知で伺いたいのですが、よろしいか?」
おずおずと創介が口を開いた。正直、答えを知るのが恐ろしい問いかけを今から自分はしようとしている。
「その引き取った子ども達は、えーと……どうなったの?」
あんまり知りたくないのが本音だが――嫌な予感を覚えつつも問いただせば、返ってきたのはやっぱり想像もしたくないような言葉だった。
「――変態どもの慰みものだよ」
ミミューがそこで少しトーンを落としながら悲しそうな口調で言った。その顔に表情は全くなかった。
「地下部屋で行われている、下劣で、下品で、この世で最も醜悪な悪趣味ショーの道具にされる……。子ども同士で殺し合わせたり、大人達に嬲りものにされたり――やり方は様々。途中で命を落としたらもうそれまでだよ、その子は壊れたオモチャと同じように捨てられるのさ。庭からは大量の死体が見つかったってね」
ミミューの声は少し怒気を含んでいる様にも聞こえた。
それはいつもと何ら変わりの無い、もの静かな口調であったにも関わらず吐き捨てるような少々乱暴な響きを伴っていた。セラがいつも以上に険しい顔つきになっている――「反吐が出そうだよ」。
「もっと反吐の出そうな話をしてあげようか」
唇を引き結んで視線を下げたままのセラに、ミミューが呟いた。
「庭に埋められていたのはその残虐ショーの被害者たちだけじゃない。……そのショーを行った奴らも変わり果てた姿で埋まってたのさ、見世物に使われた子の復讐にあってね」
「……」
双子が一斉に顔をしかめた。
「酷い有様だったようだよ。庭に埋まり切らないと判断したのか、切り刻まれた死体の一部は水道管に詰まってたっていうんだから――死体には被害者の子達と同じように無数の拷問跡と、強姦の痕跡があったそうだ」
「やめろよ」
創介もさすがにウップとえずきかけた時にそれを叫んだのは双子のうちの、例の凶暴そうな方だった。
「……別に俺達は関係ない、決めつけで物を言うな。似てる、だけだろ」
「本当かな?……僕はね、警察の人とちょっとお付き合いがあるんで結構細部まで知ってるんだ。そうだ。天使達の家の子どもたちは皆、右の二の腕に数字の焼印が押してあるそうだね」
「――っ……」
それで今度は双子が――もとい、性格の悪そうな方だけが明らかに狼狽して見せた。ミミューはそこで身を乗り出すとナイフの少年の肩と腕とを押さえつけた。
慌てて少年はその腕を振りほどこうともがいたが、それを逃れる事にはならなかったようだ。
「や・やめろ、触んなっ! さ……、触るんじゃねえよ!」
暴れる少年は無視して、ミミューがその制服を乱暴に引っ張ってひん剥いた。傍目から見れば強制わいせつの現場にも見えなくもないがともかく――露出させられた右肩には言った通り、ほとんど潰れて読めない『12』の文字があった。
根性焼きというヤツか、煙草か何かで何度も押し当てて無理やりにでも消そうとしたのだろう。その努力も虚しく、出来てしまった火傷が更に焼印の醜さを引きたててしまっている。
「……っ」
「こっちの少年もそう?」
ミミューがぼ〜っとしている片割れを見やりつつ問えば、『12』の烙印を押された少年は忌々しげに舌打ちを一つさせた。
「――ああ、そうだよ。文句あっか……」
もう一人のボンヤリした方の代わりにそう答えると、少年はミミューをひと睨みしてからその腕を力いっぱいに払いのけた。それから自由の利く腕で、制服のボタンを締め直し始めたのだった。
「君達、名前は?」
ミミューが事もなげに尋ねる。
「一真……」
先に口を開いたのはそのぼーっとしている方だった。ミミューが頷いてもう一人を見ると、もう一人は不機嫌そうな顔をしながらもその口を開いた。
「凛太郎だ、覚えとけ。クソ野郎」
「そうか。一真に凛太郎――ね。……うん、覚えたよ」
創介も、セラも、何だか面食らった様に黙っていた。というよりか、何も言えなくなってしまっていた。
FFもDQも難易度が下がったね。
というか二つともオンラインとかになって
方向性もちょっとずつ変化しているんだなぁ。
ドラクエオンラインは今凄い事になってるみたいで、
友人の隣で延々眺めてたけど中々愉快だった。
リアルマネーを賭けてるのか知らないけど、
ユーザー同士のギャンブルみたいのが横行してる。
そしてその賭けの現場で、大負けして大金を一気に
なくしてしまった男ユーザーがほとんど発狂している場面に遭遇してしまい
私と友人でそれを淡々と眺めていた、あの夜明け頃の事を私は一生忘れません。
同時にネットでゲームだけはしねぇと誓った。