前半戦


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08-1.手紙



『りんたろうと一真へ。

おひさしぶりです。
ひさしぶりって言うのかな。でも、二人とはなればなれになってからとても時間がたっている気がするからやっぱりおひさしぶりです。

ふだん、友達とじゅ業中に手がみはするけど、ながい文しょうの手がみなんて書かないから何て書けばいいのか、よく分かりません。でも、かきます。

あれから、二人はどうしていますか?

家ぞくはバラバラになってしまったけど、私はまたみんなが一緒になれたらいいなと思います。

るいさんといちろうおにいちゃんがしんでしまって、しゅう一おにいちゃんと公平おにいちゃんも元の家に戻っていったけど、色々とあってまたいっしょになれました。

ナオちゃんは今もどこにいるのか分かりません。ゆくえ不明というやつです。ときどき、けいさつのひととか、よく知らない人からでん話がかかってきたり、家の前でまっていたりします。

まえは、かえりの道で、黒色の車にずっと追いかけられました。
しゅう一おにいちゃんに言ったら、すごく怒っていました。怒ったのに、けいさつには言わなかった。ふしぎだね。

大人は何でもひみつばかりです。
しゅう一おにいちゃんもそうだけど、いちろう兄ちゃんもかくし事だらけだった。

らい年からはもう高学年だから、りんたろうも一真も、りおも大人なのに、ずるいなぁ。』




 久しぶりの学校だった。
 事件があって、色々と片付いて、小学校のクラスに戻った時には、そこにはもう僕らの席はなかった。分かっていた事だけど、いざ目の当たりにすると改まったように自分の居場所がないのを思い知らされたようでいい気分はしなかった。

 足を踏み入れてすぐに分かった。
 僕らを拒絶するような空気が、途端に教室の中に流れたからだ。

「ひ、ひっ久しぶり……せせせ背が伸びたんだねぇ」

 そう話す担任だったが、明らかに声が裏返っている。目に見えて狼狽して、顔を引きつらせ、物凄く困り果てているようなのが自分達の目で見てもよく伝わってきた。
 少しだけ期待をした自分が馬鹿であったらしい。

「あ、ひ……ひっ、久しぶり――」

 次に話しかけてきたクラスの委員長もそうだった。
 あらかじめ用意してあった言葉を、業務的に、クラスをまとめる人間だからという理由で言っただけなのであった。だから、あえて、こちらからも会話を続けてみた。

「うん。元気してた? 何か変わった事とかあったの?」
「え……あ、いやぁ……」

 ほら、みろ。会話する気なんてさらさらないんだ。その癖、建前だけで話しかけてきやがって。もういい、と思った。こいつも、自分を見た瞬間「うげっ」というような顔をした先程の担任も、ひそひそ話をする噂好きのブスどもも、いやはやもうこのクラスだけじゃなく学校全体がカスだった――。

「起立、礼」

 どれだけ時間が流れようとも何も変わってなど、いなかった。『事件』が起きる前から、結局僕らには何も変化などは訪れないのだ。

『一日元気良く。明るい笑顔、輝く!』

 僕らは教室の壁に貼られたスローガンのような生徒にはなる事はできないだろう。それは僕らが悪いわけでは決してなく、親に捨てられたからでもなく、小さい頃にあんな目にあったからでもなく、誰のせいでもなく、僕らは僕らだからだ。

 そうだよなあ、とどこか諦めにも似た境地で笑う自分があった。こんな空間に収容されていたら、誰だって鬱憤は溜まるだろうし、それを発散する場所だって欲しくなるのだろう。その場所がたまたま自分だったわけだ。

 何日か通ってみて、はっきりと分かった。
 この空間の秩序は皮肉にも自分という存在で保たれているという真実に。クラスのみんなは自分をはっきりと怖がり、避けている。けどそうする事で、皆は共通の話題で盛り上がったりして、時には自分に妙なあだ名をつけたりして爆笑したりなんかしている。




本編年齢にあわせて昔と矛盾が生じる部分は
変えてありますよ。
なのでぐっと下げて凛太郎もリオも小学生くらいの時に
ナオ君がルイさんを失った事になります。
あれ、ていうと公平兄さんってば
小学生のリオたんに手を出そうとした可能性が微レ存…?

最近の小学生は発育いいからなあ
わからんね(すっとぼけ)




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