前半戦


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05-1.猫を殺せば七代祟る



 そこは既に廃墟と化した民家。海の傍にぽつんと佇んでいた、そこそこの大きさを誇る屋敷。民家というよりは別荘だろうか――中は無人のようだ。

 とりあえず、一行はここで休息を取り一晩を越す事にした。ホールに入るなりその静まりかえった屋敷を見渡した――しかしながら無人の、という表現は少々語弊があるかもしれない。

「早速おいでなすった……ふう、やれやれ。休む間もないとはまさにこの事だね」

 ミミューが苦笑を浮かべながら呟いた。

 ぐるりと中央から上に向かって伸びている螺旋階段から奇声と共に現れたのはここの持ち主だろうか? 高そうな服を身に付けた、まだ若い男だった。

 顔の半分を見事に食われているようだが、それでも中々ハンサムな顔立ちだ。が、悲しい事に下半身丸出しなのでいたたまれない……創介は危うく自分もそうなる所であった事を思い出し嫌な汗が出た。男の背後から連なるように現れたのはこれまた高そうな服を身に付けたゴージャスな身なりの女だ。髪はかなり気合の入った盛り髪で、さながら夜のお姉さんといった具合だろうか。

 この男とは恋人同士かはたまた愛人関係か……女の右手には血のついた文化包丁が握り締められている。創介には何となくこの状況の予想がついてしまった。多分、この男浮気中だったんだと。それでこの女に包丁を持ち出されたに違いない。

「ナンシーちゃん、君は俺の後ろに……あんらっ?」
「神父様、あたしも戦います。どうか銃を貸して下さい」

 キリっとかっこつけながら飛び出した創介を軽くかわしながら、ナンシーが前に出た。

「い、いいけど……撃てるの? 使い方は?」
「ええ。さっきも使っていたの、見ませんでしたか? ほんの少しだけだけど、ある程度までは訓練してるの。だから、全くの素人よりはマシだと思います」

 言いながら手早くグロック17のマガジンを抜き出して、弾を補充した。十七発ぶんの弾を込め、ナンシーはマガジンを挿入すると遊底を引く。初弾がチェンバーに装填されたのを確認し、ナンシーは一度セーフティをロックして、再びマガジンを抜いた。もう一発ぶんの弾丸を入れて、計十八発分の弾が込められたわけである。

「――はは。どうやら、そのようだね」

 その慣れた様子の動作を見守り、ミミューが笑顔で返す。

 ナンシーは相変わらずの無表情のままそれを中々堂に入った手付きで構えた。創介は自分よりも遙かに頼りになりそうなナンシーを見てぽかーんとするばかりである。自分なんか見よう見まね、頑張った結果が子どもが水鉄砲で遊んでいるみたいな動きしかできないと言うのに……。

――あ、あれぇ? 何かこれって俺の立場が……

「おい、ぼさっとするなよ!」

 セラが横で怒鳴った。

「わ、わかってるよ……」

 双子はというととりあえず物陰に隠れるしかない……。

 しかしながら、武器を握り締めていたとはいえたった二体のゾンビが片付くのは実に早かった。たちまち周囲に血生臭い匂いと火薬の匂いが立ちこめて、ひとまずは落ち着いたらしい。

「おーい。出てきてもいいよー」

 ミミューの呼びかけに双子が姿勢を低くしながらひょこひょこと姿を現した。ひと段落ついたので、次に一同は寝床として使えそうな場所を見て回る事にする。

 セラが忘れずにその大きな扉を一旦閉め、厳重に鍵をかけるのだった。

「……ここは、チームを分けて見て回らないか。二手に分かれるのがいいと思うんだけど?」

 そんなセラの案に、創介がニッコニコ顔で真っ先に手を上げた。

「はぁい! じゃ、俺はナンシーちゃ」
「神父さま、一緒についていっても?」

 ナンシーは創介の言葉には耳もくれずに名乗りを上げたのであった。先のエミちゃんから引き続くように創介、どうにも撃沈ばかりである。

「ん? ああ、いいよ。僕はこの双子ちゃんを面倒見たいからもう一人背後の守りが欲しかったんだよね。実を言うと」

 ミミューが快諾すると創介が不満げに口をへの字に曲げる。

「えーっ! じゃあ俺とセラだけですかぁ?」
「……嫌なら一人で行けばいいじゃない」
「ぶー……」
「とりあえず、屋敷内ひととおり見て回ったら再びここに集合しよう。そうだな、時刻が四時を回るまでにはここへ戻るように」

 そういえば、もうそんな時間なのだ……夜から逃げ回って、もう朝日が昇りかけている。夜が明けても、この悪夢からは覚める事は無さそうなのだが。

 創介とセラは右回りに屋敷の中を進む事にした。創介家からあらかじめ持ってきておいた懐中電灯を頼りにしながら、二人は軋む床の上を歩き始めた。ハッキリ言って、創介の家よりも広かった。

「ナンシーちゃん可愛いよなぁー、服装はちょっと激しいけど」
「……」
「彼氏とかいんのかなー。あんなにつれないし……あ、ひょっとしたらあの服も彼氏の趣味に合わせてるのかもね! バンドマンの彼氏がいるとかね。うん、我ながら的確な意見」
「おい、うるさいぞ。黙って歩け」

 ものすごーく冷たく言われてしまった。心なしか今まで言われたどの「うるさい」よりもぶっちぎりで一番、冷たく叱られた気がした。

「何だよー、こんな状態だしせめてちょっとくらいロマンスとかの楽しみがあってもいいじゃない。ポジティブですよ、ポジティブ」
「不謹慎だぞ」

 呆れかえったようなセラの声に創介が後ろでぐっと息を詰まらせる。

「ん゛んっ……それ言われちゃうとどうしようもないんだけども〜……」

 喋っていないと落ち着かない、沈黙があんまり平気ではない創介とは正反対に、セラは物静かなヤツだ。話題も無いのに無理やり喋ろうとはしない。まあ、それは十分に分かっていた事なのだが。こうやって話すようになるその前から、恐らく知っていた。

――……

 創介は何となく、ずーっと気になっていた例のアレについて聞いてみたくなった。昔、公園で見たあの光景。

 自分の勘違いならそれでいいし、むしろそうであってほしかった。……よし。今なら、今この瞬間ならば何となく聞けそうだ。うん、と自分に言い聞かせるよう頷いたがすぐに弱い自分が「待って待って!」と呼びかけてくる方が早かった。

――いや、どうだろう。聞いた瞬間顔色がたちまち変化して、襲いかかられたりして……

「なぁ」

 またどうせつまらない話でも振るんだろう、といった具合にセラは返事をしなかった。

 代わりに、ちょっとばかり冷やかな視線をスッと寄越した。

「ずっと気になってたんだけどさ……その――」

 言いにくそうにもごもごと口籠る創介に、セラは訝るように目をちょっと細めた。

「お前はもう覚えてないかもしれんけど」

 と、まだ言い終えないうちにセラが急に足をぴたりと止めた。間もなくこっちを、きっと睨んだ。一層冷たげな眼差しであった……。

――げっ、やっぱマズかった!?

「あ、あ、いや、その、何でも……」

 慌てて取り繕う創介だったがセラの表情は依然険しいままで、いよいよバッとその片手を振り上げた。

「ひィっ、」

――やややっ、殺られるぅう……!

 振り上げたセラのその手が創介の口元を塞いだ。創介はもはや顔面を真っ青にさせて只ばくばくと鳴り響く自分の心臓の音に耳を傾ける事しか無かった。



ホラー映画で死ぬ奴の特徴
・セックスしてる馬鹿そうな若者
・マリファナとか麻薬する若者
・裸で湖で泳いだり無駄におっぱい出す女(大体パツキン)
・夜勤中の肥満体型な警備員
・イキリオタク
・格闘技とかやってて「俺は空手の段持ちだぜ?」とか主張したがる自信ニキ
・性格ひねくれてる奴は中々死なないが最後の最後で逆転死亡
・伝承や伝説などを「んなのあるわけね〜よww」とか馬鹿にする奴
・総じてチャラめの若者(監督や脚本家がリア充な青春を送っていないので
大体八つ当たりの対象にされる。いやほんとに。気持ち分かるもん)
他にあったっけ?
いじめっ子キャラも大体死ぬよね。



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