前半戦


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03-3.セラのこと



 創介がこのセラを苦手としているのは、今に始まった事じゃ無かった。実はセラとはなにげに長い付き合いなのでさる。遡ると小学校低学年くらいの時からずーーーっと一緒のクラスだ。だが……。

 と、創介はセラの後姿を見た。生白い、その清潔なうなじがまず目に入った。セラはどちらかというと大人しいヤツで、それは昔っからそのまま変わらない。これといって学校生活において問題を起こす事も無く、成績優秀で教師からの評判も上々。面白味は無い(……多分)が、そのどっちかっていうと可愛らしい感じの面立ちがひそやかに女子人気もあるようだが、まあ自分の人気には足元には及ばない――と、それはおいといて。

 とにかく彼は真面目な生徒なのだ、にも関わらず創介がこれまで彼といっさいの会話をせずにここまで来たのには理由があった。

 あれは確か、小学校三年くらいの時だ。
 
 どういう経緯だったか忘れたが、セラは孤児ゆえに施設育ちなのだが施設を飛び出して、公園で生活しているなんて噂が立った。事実それは本当の話であり、にわかには信じがたい事に彼はほとんど施設には戻らずに公園生活を強行していたらしい。たかが小学生の身分で親元を離れて!……驚きである。

 それでまあ好奇心旺盛な悪ガキ盛りの自分らの事だ。創介にその役割が回って来た理由は罰ゲームだったかそれとも自ら立候補したのだったかは忘れてしまったが、たった一人でその場所を覗きに行った事がある。

 で、場所はO公園。巷じゃ幽霊が出る! なんて噂もある曰くつきの場所だ。あそこらへん、確かに外灯も少ないしほとんど人も通らないから確かに不気味なんだよな――まあ、実際に現れるのは幽霊より変質者の方が多いらしいのだが。で、そんな不気味な場所にセラは一人で野宿生活をしているというのだから、創介は半ばからかい半分のような気持ちでその場所へと向かった。

 それが、いけなかった。噂のダンボール小屋を見つけて一気にテンションが上がったのを今でもはっきり覚えている。はしゃぎながら近づいてみると、確かにセラが、そこにいた。セラはしゃがみこんで何かをゴソゴソといじっているようだった。ちょっと脅かしてやるつもりで、意地の悪そうな笑顔を浮かべた後創介が声を上げた。

「わっ!……エヘヘ。びっくりした!?」
「――え?」

 第一声目は確かそう、だったように思う。セラが別に驚いたような顔もせずにそこから立ち上がった。創介は……只、圧倒された。ただただ、戦慄し、絶句した。

 なぜならば、セラのその身体に、真っ赤な血がべっとりついていたから。

「ヒッ!?」

 そりゃあ、ペンキ塗りでもしてたっていうんなら別にこの話はそれでお終いなんですよ、只ね――立ち上がったセラの向こう側……茶色いダンボールの上に。ごろりとそこに転がっていたのは明らかに人の生首と思われる物体であった。何だって、マネキンと生首を見間違えた? マネキンっていったらあれね、美容室でよくカットの練習に使われる――けど動くのかな? あれは……。

 転がったその生首は男だった気がする。ほとんどおぼろげだが、その顔の目がぎょろっとこっちを見たのを最後に……創介はもう絶叫して、無我夢中で逃げ出した。当時、かけっこでは大体リレーの選手の候補に選ばれていたので脚の速さにはそれなりに自信があった。

 振り向かないようにしてそこから一目散に駆け出し、ある程度距離が開いてからセラが追ってこないかを確認する為に振り返った。

――あれは何だ! あれは何だ!! あれは何だって言うんだよっ!?

 それでまあその時夢中だったものだから鞄をどこかに放り出してしまって忘れて来た。当時習い事として無理やり通わされていたピアノ教室の月謝もそのまま置き去りにしてしまい、ものすごく叱られたのもあってかダブルパンチで嫌な記憶として残っている……。

 あれを目撃してからと言うものの、創介はセラが恐ろしくて仕方が無い。これは自分に非はない。自分じゃなくてもあんなモンを見たら誰だって恐ろしくなるというものだ。

――あいつはあそこで何をしてたんだ? 映画の撮影? んなアホな…… 

 以来、セラとは極力目を合わさずあわよくば避けて通って来たのだがクラス替えのたびに同じクラスになって、しまいには高校まで一緒と来たもんだから運命とは抗えないものだ。ここまで同じにされるとストーキングされてるんじゃないのかとさえ一瞬疑った。

 クラス替えの時に張り出される紙を目にするたびに「何でまたいるんだよ!」と心の中で叫びまくっていたのは言うまでも無い。

「平成のジャック・ザ・リッパー」
「オヘッ!?」

 突然、微妙にその回想とシンクロした内容の言葉が聞こえて来るもんだから創介は不意を突かれて飲んでいた野菜ジュースを吐き出した。

「っだよ、きったねえな……。しかし、気味悪い事件だよなあ、老若男女問わず! 残虐非道の、殺人鬼!」
「エホエホ……ッうえっ……。あ、ああ。近頃世間様を騒がせてるって言う、ね」

 ヨシサキが口にしたのは最近、この近辺に現れると言う連続殺人事件の概要だった。

「気色悪いったらないな。犠牲者はまるで獣に食い裂かれた様に、腹や喉、身体の至る部分をめちゃくちゃに荒らされてるって。歯型があるってんだから実際に噛みついてるってことかな? 変態の仕業だろうなー」
「――……」

 世間では封鎖された第七地区の奴らの中に、実はまだゾンビ菌に侵された人間がいてソイツが犯人なんじゃないか――なんて噂されているが、差別への配慮の為か大々的に伝えられてはいない。

 けど、そんな思案とは別に創介は思うのだった。薄々とだが、犯人はセラなんじゃないのか……? と。

「いかんいかん、何でもかんでもそうやって人を疑うのは……」

 独り言のように呟いてから創介がぶんぶんと首を横に振った。

「? あ。つーか今日はあのピンクちゃんとやらの家に行くの? いいね〜、もてる男は」
「へっ? あ、そういや何かそんな事言ってたっけ。けど何かスゲー面倒くさくなってきたなぁー、身体が言う事きかねえよ最近……」 

 それを聞いてヨシサキが何とも言えない顔つきで創介を見つめた。

「はぁ、俺なんか今夜親戚のバーサンの通夜だぜ。顔もよく知らねえのによ」

 どこか面白くなさそうにヨシサキが付け加えるようにぼやくのだった……。



探偵ナイトスクープおもしれ〜 DVD欲しいわ。
好きな依頼
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面白いのとハズレの差が大きいよね。
小枝ちゃんいなくなって寂しいなぁ〜。
泣ける系も名作多いね。
格闘技系は泣けるの多い。



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