前半戦


≫top ≫▼title back

01-3.リターン・オブ・ナイトメア



 で、陰口等叩かれているだろうとはよもや思いもしない呑気な男・創介はと言うと。

「母ちゃんたちには内緒だぞ〜♪」

 鼻歌を口ずさみながら今晩の『遊び相手』になってくれる女の子を求めて街の中をふーらふら。さっきの彼らの愚痴の延長戦ではないが、この男確かに最低最悪のゲスの極みである。

 幼少の頃から大人と接する事の多かった彼は、物心付いた頃から既に色恋に関しては興味津々だったようで女遊びをハッキリと覚えたのはいつぐらいだっただろうか……というか、生まれついての天性の遊び人なんだと言う自覚はあった。

 美形な母親譲りの容姿と身長、あとは小さな頃から大人に囲まれていた事によって培われた喋りのスキルの賜物か、女性に不足した事はないッッッ! と胸を張って言える自信が彼にはある。勿論こっちからもガンガン行くし望んでない時でもあちらから来てくれる事がしょっちゅうだったのでいっつも彼の周りには誰かしらがいた。

――でも男とつるむのきらーい、だって男ってむさ苦しいんだもん

 が、この通りで男友達は悲しいくらいにいないらしいのだが本人は気にしちゃいない。

「……むっ。ここでちょっと匂いチェック!」

 女の子に会う前なので臭かったりしたらもう最悪だ。創介は自分の制服をくんくんしつつ、先程のキャバクラのせいかちょっと煙草臭い……とポケットから携帯用としてボトルに詰め替えて持ち歩いている消臭用のスプレーをさっと取り出した。

 全身に降りかけるとたちまち柔軟剤の香りを漂わせる出来る男(風)に変身である。

「ねー、あの人ちょっとかっこよくない? 何か王子様っぽい!」
「えっ、どれどれ?」

 創介の顔立ちはどちらかと言えば今風で、この洗練された都会の雰囲気にはよく似合っていた。ありがちで埋もれると言えば埋もれるのかもしれないが逆に言えば型にはまっているという事で、外れる事はあまりない。



 女子中学生二人組みがそんな創介を見つけながらひそひそ話を始めるが、創介自身は気付いていないようだった。

「……未来ちゃん、頑張って番号聞いてみたら?」
「えー、やだっ。無理無理、緊張するし〜っ」

 はしゃぎまわる女子中学生二人組みには目もくれず、創介はお次は路駐されている車のガラスに向かって立った。何をしているのかと言うとこれまたエチケットのつもりで、歯に何かついていないかチェックし始めたらしい。角度を変えながら口の中をあーんしたりしているのをよそに女子二人はきゃんきゃんと盛り上がっている。

「大丈夫だって未来ちゃんぎゃんカワなんだからーーっ」
「何ゆってんのぉ、みなめろだってまぢ細くてきゃわたんだしうちなんてそれに比べたらぶすだしぃ」
「うわやっべ! 鼻毛出てんだけど!!」

 そんな二人の声に負けじと叫んだのは、二人にとっては『王子様』である筈の創介だった。創介はミラーを覗き込みながら鼻の下を伸ばし伸ばし、気難しい顔をしていた。

「どーすっかなコレ、クッソやっべぇ〜。エチケットカッターとか持ってねぇしなぁ流石に……あ、いや待てよ。この角度なら見えないかな……ど、どこまで上向いたら見えるんだろ……しくったー、ちきしょー!」
「……」
「……」

 そんな姿を目の当たりにしてしまっては、流石に王子様の三文字も霞んで見えてしまうのであった……。



創介って人生楽しそうでいいよなー。
生まれつきの金持ちだから性格もいいしね。
努力で勝ち上がった金もちは歪んだ人多いけども……



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -