09-1.悪童日記
彼らは、いわゆる双子だった。
おんなじ日にこの世に生を受けて、おんなじ日に生まれ落ちた。
「ほォら凛太郎ちゅわぁん。早くその棒を取らないとー! またまた首輪に電流流しちゃうんだぞー!」
「一真、起きろ! 何やってんだよ、そんくらいで気絶してんじゃねーぞコラ!」
幼少期は、暗い地下の一室で過ごした。そこで毎日、見世物のように、変態どもを悦ばせるための悪趣味なショーに興じていた。
凛太郎と一真。
それが彼らに与えられた名前だった。本当の親の顔は知らない。彼らを生んですぐに死んだから。
「やーれ! やーれ! えーいくそっ」
「……お、一真が起きたぞッ! そうだ! 起きろ! いいぞ!」
それまで殴られた末に気絶していた一真が昏倒とする意識の中、ふらふらと起き上がった。顔中を腫れさせて血だらけにしながらも、一真はそれでも立ち上がった。そうする事を運命付けられた操り人形のように。
「――凛太郎! さっさとそいつ沈めろ!」
「う……ううっ」
――何故だ。何故僕らはこんなコトをしなくちゃいけないのだ、兄弟で
「りん、たろ……」
一真が虚ろな視線でそう呟いた。凛太郎はぶるぶると震えながらその転がった棒を拾い上げた。
――殺れっ! 殺れっ! 殺れっ!!
観客達の声が、興奮を帯びて一層盛り上がった。凛太郎は痛みに耐えながらそいつらの顔を見た。歪む視界の中、みんなどいつもこいつも笑っていた。
「一真! ほら、スタンガンをやる! これで何とかしろ!」
客席からスタンガンが一つ投げ込まれた。よく知られたハンディ型の形状をしている。それの使い方は、分かっていた。一真がぼんやりとする頭の中、それを拾い上げた。
「……あ、う」
「よーし! いいぞ、やれー!」
「畜生〜、そんなのってアリかよ!」
別の観客が悔しそうな声を上げた。
「あ。そうだ、ここいらで記念撮影とでもいくかい!? まだ顔の判別がつくうちに収めとこう」
言いながら観客のうちの一人が興奮気味にインスタントカメラを構えた。
「ほら、二人ともこっちを向け」
何が何やら分からぬままに、凛太郎と一真は武器を持ったまま声のした方を見た。レンズを見ろ、と促される。
「ほぅーら、笑え! にっこりと笑え! 愛想良〜く笑えよー!」
二人とも口は笑っていたが目は引き攣っていてとても笑えなかった。カシャッ、と薄暗い室内にフラッシュが焚かれた。
――2×××年、某所にて撮影……、と、その時のぼろぼろの写真には走り書きのようなものが記されている。
この某所にてって表現、
不安の種思い出してざわざわするね。