前半戦


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08-1.ここは悪夢街一丁目



「ドーン! バーン! デクシ! はいお前のルカリオ死亡〜、しゅーりょー」
「だから兄ちゃん! ミカルゲ使うのずるいってゆってんじゃん! 反則だよ!」

 携帯ゲーム機をそれぞれ手にしながら呑気にゲームで遊んでいるのは小学生の兄弟と思しき二人組である。

「反則っていつ誰が決めたんですかー? 何時何分何秒、地球が何回回った時ー?」
「バカ! 兄ちゃんのあほ、うんこったれ! 次は負けねーし!」

 それから子ども達は第二回戦目を始めたらしい、歩きながらのゲームは危ないよと注意されることがしょっちゅうだが二人は聞き入れる気配がまるで無かった。

「なぁタカト〜」
「何?」
「俺さぁ、チンコに毛ぇ生えた!」
「……嘘やん!」

 兄からのその衝撃というか突然すぎる告白に弟はその操作を誤ったらしい。

「――あ、馬鹿野郎! 間違えてサイコソーダなんか使っちまった!……で、兄ちゃんホントなの?」
「ほんとほんと。だから俺はもう大人だな、だから明日からは小遣いもアップすると思う」
「えー! ずるいよ! 嘘ついてんだ、兄ちゃん絶対に嘘ついてんだ。ていうかチンコに毛なんか生えないよ! 俺は生えてないもん!」
「パパの見たことあんだろ! 生えるよ!」
「でもそんなに早く生えないに決まってるよ! パパぐらいにならなきゃ生えないんだよ!」
「生えますー! 生えるよバーカ!」
「生えない! 絶対に生えない! うそつき、兄ちゃんの大うそつきーー!」

 やがてゲームを忘れて揉め始めた二人の傍に走り寄ってくる影があった。息を切らしながら、ハアハアと。

「じゃあ証拠見せろよ!」
「あー、いいぜ! 家帰ったら見せてやるからな……」
「君達!!!」

 二人がばっと振り返った先にいたのはところどころ血のついた、全裸の、男だった。勿論言うまでも無く創介なのだが。当たり前だが二人は絶句した。全裸の男はゼエゼエと、その痛む腹を擦りながらようやくのように口を開いた。

「あ、危ないよ……早く、早く家に帰って……オエッ、ぶえ」

 創介は傍にあった電柱に手を突いて、腹を押さえながらえづくような仕草を始めた。ようやく落ち着いたのか、咳払いしながら何とか持ち直した。ぽかーんとする二人の前に立ちふさがるように出るともう一度言った。

「分かった? 早く逃げなさい、おうちに帰ったらパパとママもつれてすぐに逃げるんだよ。みんなに逃げるように伝えて!? ね!?」

 言いながら創介は再び走る姿勢を作って駆け出した。そんな姿で現れた上にそんな事を急に言われた所で少年二人は呆然としたまんまだ。

 小学生二人は創介の傷だらけの背中を眺めながらぼーっとしていた……。


「チンコだ……」
「チンコだったな……」


 二人のすぐ背後に、「チカン出没注意!」の看板が立っていたことなど誰も知る由は無かった。



だからこの章は……



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