ナイトメア・シティ | ナノ


▼ 02-4.その強さがあれば


「しばらく休むといいよ、ね?」
「……そんな訳にも行きません」

 ヒロシが立ち上がろうとするのを、またもや引きとめてノラは首を横に振った。今度は変な下心とかは一切抜きの、純粋な心配からだ……多分。

「大丈夫だよ。俺の父さん達が……ヒロシちゃんのことぶん殴ったあのにっくき田所みたいに汚染されてない隊員達が何とか、あのハイなんちゃらって変態みたいな野郎を追い詰めてくれてるよ」
「向こうはまだ手の内を全て見せ切っていない。力が目覚め切っていないからと言って、弾丸の雨を浴びせて力押しで進めば勝てるかと言われたらそうじゃないんだ」
「あ、それは勿論。俺達も動き出す必要はあるさ! いつまでもだらだらとはしてらんないよそりゃー」
「、なら、すぐにでも……」
「だーめー。痛いんでしょ〜? じっとしなきゃ。傷口広がるよー」

 そう言ってから、ノラがヒロシをもう一度座らせたのであった。

「働きすぎだよぉ、ちょっと。オーバーワークだって絶対」
「……当たり前だ。あいつに休ませる暇を与えるほど僕は優しくは無い。それにあいつが殺せば殺すほど、動く死者の数は増えて奴の兵隊は増えて行く一方だ。ネクロノミコンの思考が少なからず読める僕でないと、闇雲に立ち向かったって危険なだけだろう」
「うんうん。それは分かるよ、じゅーぶん分かるんだよー。……でもさぁ」

 ノラがヒロシの方へ向かって腕を伸ばした。しゃがみ込んでから、ヒロシの胸元に顔を沈めるようにしてしがみついた。制服のシャツの上にノラの猫ッ毛がふわふわと触れるのが分かった。

「ちょっとぐらいはさ、じっとしててよ。頑張り過ぎだってば……あ、別に取って食いやしないです。うん」
「……」
「俺がこんな事言っちゃうのも何だか無責任だし、口出しすんなって言われるかもしれないけど、ごめんね、最後まで聞いてね。……こほん。ヒロシちゃんが今までずっと一人で頑張ってきた事は俺もよく分かってる、から。だから、こんな時ぐらいは……うん、休んだらっていう」

 ノラの声はいつになく震えていて、さっき自分を襲いかけた時のそれよりもずっとずっと震えている様な気がした。すぅっ、と息を吸い込んで、また一つ吐いた。

「――だっせー、震えてら。俺のキャラじゃないよね? ちょっとこれは」
「……。それで……?」
「まぁ、こんなの口実で、ホントは少しでもヒロシちゃんと一緒にいたいだけ。なんて言ったら、ヒロシちゃんにぶん殴られるのかな〜、へっへっへ」
「でしょうね、よく理解してらっしゃる。……右がいいですか。それとも左で? 選ばしてさしあげましょう」

 ヒロシが本気とも冗談ともつかない、にべもなく静かな声で呟いた。いつもらしいなぁ、と思いノラがくすりと笑いながら顔を上げた。そして、見上げた先にいるヒロシと視線がかち合った。

「はぁっ。……俺って嫌な男なのかなぁ〜」
「……?」
「ユウくんが、ヒロシちゃんの心の隙間にするっと入り込めたのが悔しかったよ。……ちょっとだけね?」

 一瞬、何の事やらと思った。

「あの日の晩、俺起きてたんだよ」
「……」
「ヒロシちゃんが――ずっとそうやって一人きりで戦ってきた事。ユウくんは真っ先に気付けたのになー、俺なんか全然駄目だなぁーって。な〜んかダメダメだなーって……ね、うん。超へこんだね、あれは」

 そこでノラの身体がゆっくりと離れて行った。ノラが鼻の下を掻きながら笑った。

「惚れてる相手の気持ちを察してやれないなんて、男失格だよ。そんなの」
「何か……ちょっと勘違いしてますね、貴方」

 ヒロシが突き放すように呟いた。

「そんな事に気付いてもらえたところで僕は誰にも心を開くつもりはありませんよ。それに……」
「?」
「もう済んだ過去の事にこだわっていても仕方ないでしょう。今は、別に一人なんかじゃないんですし……別に……」

 そう言ってヒロシが言い淀むのだった。何を言えばいいのか、どう言えば伝わるのかをあれこれと思い悩んでいるようである。

「――そっか。なら、別に」
「か、勘違いしないで下さいよ。これは別に、その、共に戦ってくれる仲間という意味合いであって友達とかそういう慣れ合い的なものでは無くて……」
「あーあー、してないしてない」

 ノラがぶんぶんと首を横に振って微笑むのでヒロシは必死に否定している自分が益々墓穴を掘っているように思えてならなくなったので、それ以上何かを言うのを止める事にした。全く、だからコイツという存在は苦手なのだ。ヒロシが大きく溜息を吐いた。

「だからさ、その……もう少しだけ」

 ノラがいつもより少し小さな声で囁くと、無理やり隣に座らせたヒロシの肩にぽすんと頭を乗せた。少々外側に跳ね気味の髪がふわっと触れる。

 何故自分がこうも好かれたのかほとんど分からないが、先程までの威勢はどこへ行ったのか一転してノラは、今度は子どもが親に甘えるような調子を出している。こういう切り替えの早さというか、そのギャップにも驚かされるし何より腹の底が窺い知れなくて、やっぱりこいつは敵にはしたくない。そんな事を考えながらヒロシは身を預けて来るノラのやや癖っぽさの目立つ髪を見て思った。




海外の笑いと日本の笑いってほんと違うよね。
笑いのつぼっていうのか何なのか。
ミスタービーンとかフルハウスとかさ、
夕方に放送してたのよく見てたけど
海外のコメディドラマって客席の笑い声が
もろに入ってるじゃない。
で、その笑い声の大きさとか反応で
何がうけてるのか大体分かるんだけど
逆にブーイングが起こる事もあるんだこれがw
食べ物を粗末にするようなのは
結構「Oh…」みたいな声が入るし
かと思えば消極的な民族の日本人が見たら
ちょっとドン引きしちゃうようなシモネッティーには
大爆笑したりで本当海の向こうの人とは感性が違う。
だから映画でも日本人には分からない海外映画って
結構あるよね。
逆に日本映画でもわけわかんないのはいっぱいあるんだけど


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