▼ 01-8.君を死なせたりなんかしない
先行していたヒロシからのサインを受け、一同は腰を低くしながら足を進める。
「奴との距離は今どのくらいなの?」
ユウが尋ねると、ヒロシはこめかみに指を置いて考え込む様な表情で少しばかり俯いた。
「……どうも僕らから逃げているように感じますよ。自分がまだ完全体でない事に気がついたのか、それともこの混乱を長引かせる事を楽しんでいるのか――まぁ、その両方といったところか。外見もそうだったが、やっぱり趣味の悪い輩だ」
声色そのものは落ち着いてはいたが、唇には失笑ともとれる笑みが浮かんでいた。伏せていた顔を持ち上げるとヒロシはすっくとその場から立ち上がったのであった。
「何度も言っていますが、奴に会ったらすぐには撃つのは止めてくださいね。またあれをやられると流石の僕らでも一溜まりもありません」
あれ、というのは昨日のニュースで見たあの撃ちこまれた弾丸を全て止め、尚且つはじき返したあのとんでもない能力の事だろう。一同は顔を見合わせた後、ヒロシの方を見て頷いた。
「恐らく奴は率先して僕を狙ってくる筈でしょうね。僕が引きつけている間に、ネクロノミコンを狙うまでです。……特に……」
不意にそこで言葉を切って、ヒロシはノラの方をちらと見た。
「正直に言って、お前には期待していますよ。周りのザコどもには構わなくていい、狙うのは――」
「その変な本、のみね。あいよー、任せて〜」
ノラがやっぱりへらへらとしてもう十分わかっている、という風な返事をして答える。
「何か……、こう」
再確認を終えてヒロシが足を進めようとした時、石丸が突然口を挟んだ。
「俺達が、その……世界を救うって事だよな。これ」
「まぁ、結果としてはそうなりますね」
真っ先に反応を寄越したのはヒロシだった。
「何か――、自覚無いけど。俺達凄い事しようとしてるんだよな? へ、下手したらこの世ともオサラバだけどさ。うーんと、その……」
上手く言葉がまとまらないのか石丸はガシガシとその金に近い明るい髪の毛を掻き毟る。
「はっ、恥ずかしい話だけど今までで一番生きてるって感じがする、俺」
言うべき事は言いきった、というような表情で石丸が顔を持ち上げる。まだ達成感を得るには少々早い気もするのだが、とにかく。
「ほら、俺正直言って社会のクズだったし。お先、真っ暗だったし……あれよ、初めて社会に貢献した気分ていうか……今まで生きてるのか死んでるのかよく分かんないような底辺生活してたけどさ。初めて、生きる事に執着してるというのか……こういうのはキャラじゃないのでちょっとお寒い感じだけど」
そう言って、石丸がちょっとばかし笑ってから頷いた。
「――馬鹿ですねえ」
ヒロシが相変わらず呆れた様な調子を出しながら言うが、その一言にはほとんど悪意やトゲが含まれていない様に感じられた。
「自分がさも生まれ変わったかのような錯覚に陥ってたら先が辛いですよ。あと少ししたらまた元の生活に戻るんですからね」
その台詞にはきっとヒロシなりの『生きて帰ろう』、っていう意味合いが込められてるんだろう……という事にしておいた。
母の日や父の日になると
デパートなんかで飾られる子どもの絵って面白いよね。
その子その子で個性がよく出ている。
たまに家庭環境が不安になるような色使いと
グチャグチャの線で描かれた絵もあって
眺めててほんとに飽きないね。
そしてそんな絵に「あったか家族賞」とか
称号が与えられたりするともう
その子だけじゃなくその審査員の方にも
不安感を抱いてしまうわな。
で、何の話だっけコレ
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