ナイトメア・シティ | ナノ


▼ 01-2.君を死なせたりなんかしない


 しかもそのどれも男ばかりなのが、あながちゾンビ達は生前の記憶に従って行動する――というそのルールにばっちりと添っているかもしれない。さながら美少女アイドルを出待ちして、あまつさえ追い掛け回すマニアのようだった。

「き、キンモーッ! やだやだ、ムリムリッ。こっち来ないでよぉ〜〜!……えぇいクソったれがぁ! こうなりゃ実力行使ッ」

 叫んだところで話の通じる相手でもなく、ゾンビ達は一行にその行進をやめない。イラきしたように、まりあは舌打ちとキャリーへと手をさっとかけた。それから、持ち前のその運動神経とチアリーディング部にて身に着けたアクロバットの技術の賜物かまずは地を蹴り上げる。そして高く高く、宙へと舞うように蹴り上がる――そして、流れるように繰り出される華麗なるバク宙。

 さながら魔法少女の変身シーンのような光景には、理性などとうに無くしたゾンビ達も魅入ってしまう程の可憐さと愛らしさ。ともすれば星やハートが舞い、光源のエフェクトと共にキラキラと音でも鳴りそうなとびっきりきらびやかな空間――、

 優麗なる宙返りの後に、すちゃっと再びその地へと着地したまりあだったがその手に握られているのは夢見る全ての女の子達の憧れアイテム。キラキラのジュエリーにピンク色の装丁、キンキラキンと輝くそのボディ――そう、魔法のステッキ!……では、なくて。

「気ン持ちわっるいってーのよ!! どかないとドたまカチ割るわよ、You're full of shit!(※このクズ野郎がァッ!)」

 立ち上がりざま、まりあが捲くし立てるように叫んだ。ほんの一瞬ばかり、ドSな笑顔を浮かべたのも束の間。
 ドルルルルル、とバイクのエンジン音にも似たけたたましい音。愛らしい年頃の少女の手には似つかわしくないそれは……そう、工具としてもお馴染みのチェーンソーなのである。続けてスターターロープを勢い良く引っ張れば、ギュィイイインとそのノコギリの刃が無慈悲にその身を光らせて作動する。

「く・た・ば・れ〜〜〜ッ!!!」

 それはまるでテキサスのチェーンソー殺人鬼・レザーフェイス君よろしく、まりあは武器用に特別改造の施されたのであろうそのキンキラキンなチェーンソーを構えて喚いた。チェーンソーの刃がアスファルトの地面を擦り上げ、火花が飛び散るのが見えた。

「ファック! ファック! マザーファッカー!!……えぇいこっちに来るんじゃねーわよぉ、クソゾンビ! キモいんだよ! うらぁっ、どけどけどけどけどけぇ!」

 襲い掛かってくるゾンビを一網打尽にし、まりあはチェーンソーを唸らせながらその首を刎ね、或いは一刀両断にし、また或いは上半身と下半身をサヨナラさせてしまった。返り血をビシャビシャ浴びながらも、まりあの猛攻はしばらく続いたのだと言う……。



prev / next

[ back to top ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -