▼人形劇場



暑い夏の日のこと。
子供たちが楽しそうに騒いでいる。
炎からのおつかいで外へと出ていた大和は子どもたちを見て微笑んだ。
すると、余所見をしていたわけでも無いのに何かにぶつかった。
幼い少年だ。

「だ、大丈夫ですか!?」

慌てて声をかけると、無言で睨んでくる。
睨んできたかと思えば、その瞳は潤み、どんどん水が溢れ出す。
“人間”とそっくりだけど、“人間”では無い大和はこれが何か知らない。
けれど“人間”の身体の大半が水で出来ていると知っている彼女は少年が死んでしまうのでは無いかと、慌てふためいている。

「そ、そんなに水を出したら身体が干からびてしまいます!」
「・・・・泣いてなんかいない。」

少年はそう言いつつも、水は溢れ出す。
しまいには声を上げ、水を溢し始めた。
何が何だかわからない大和はお手上げ状態。

「い、一体どうしたんですか!?」

その問いかけに、少年は無言で手にしていた花を差し出す。
黄色く、大きな花だった。
でも、その花は花弁が所々抜け落ちてたりしている。
本来の姿はとても美しい花だろう。
けれど、今はそんな姿など微塵も思わせない。
それ程までにボロボロになっていた。
おそらく、さっきぶつかった時に損傷したのだろう。

「・・・も、もしかしてこれは俺のせいですか・・・?」

無言で頷く少年。
花の茎ををキツく握っているとこを見ると大切な物だという事が見てわかる。

「おかあさんにあげようと思ったのに・・・・・。お金がんばって貯めたのに・・・・。」

嗚咽をしながらなんとか言う。
小さな呟きと共にまた流れ落ちる水。
大和はそんな彼を見て、自分の手持ちを確認した。
おつかい用として渡されたお金。
そのお金をキツく握りしめて、少年と向き合う。

「そのお花、買う場所わかりますか?一緒に買いに行きましょう。」

微笑み、手を差し出すと、握っていない方の手で握り返された。
優しく小さな手を包み込むと少年の言うとおりに道進む。
歩いていると何時の間にか泣き止み、色々な事を話しかけてきた。
それに大和は一つ一つ丁寧に相槌を打つ。

「ねーねー。お兄ちゃんの名前はなーに?ぼくはゆうじだよ!」
「俺は大和。宜しくお願いします。」

たわいない話をし、向日葵と呼ばれる花を買うその姿は兄弟のようだった。
大和はお店の店員さんから始めてその名前を聞く。
あの不器用な炎のことだ。
教えるわけがない。
ゆうじとぶつかったところで二人は別れる。
彼はとてもいい笑顔で笑っている。
まるで向日葵のようだった。

「バイバイ、大和お兄ちゃん!」
「バイバイ。」

一目散に道路を駆けてゆき、ゆうじは直ぐに見えなくなってしまう。
後姿と向日葵が空に映え、とても印象的な風景となった。
彼が駆けて行った道路には陽炎が出来ている。



少年と向日葵


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