▼人形劇場





初めのうちは肌を掠めるほどの弱さだった。
だが、今は身体中を打ち付けるほどに強い。
突然降ってきた雨は弱まる事を知らず、強まる一方だ。
そんな雨を静かに見上げ、雨宿りする蓮葉は物思いに耽っていた。

「人形に雨は天敵なんだけど。」

蓮葉や大和は動く人形。
身体の構造は普通の人形とほぼ同じ。人間ではないのだ。
少しといえど、雨に濡れた身体は悲鳴をあげ不具合が生まれ始める。

「大和に連絡するか。」

止みそうにない雨に一つ、ため息を吐いた。
スカートのポケットから出す彼と同じ藍色の携帯。
アドレス帳には二件しか入ってない。開けばすぐ見つかる目的地。
ワンコール、ツーコール、スリーコール。
そうしてようやく聞こえる声。
簡単に趣旨だけを話し、業務的に電話を終わらせる。
あとは待つだけ。
もう一度、空を睨めば先ほどとは違った情報が入ってくる。
例えば、空気が何時もより冷たくて透き通るようだという事。街行く人々のカラフルな傘。
人形である蓮葉には心と比喩される心臓なんてものはないが、心に余裕ができたというのはこういう事を指すのだろう。
そう自覚すると天敵だと思い恨めしく感じていた雨なんてどうでもよくなった。
手を伸ばして雨粒にあたってみる。冷たいと感じる感覚はない。

「蓮葉!錆びますよ!」

目線をあげれば、色とりどりの傘の中でも一際色づく傘。
何時もの和風ではなく、洋服姿の大和が目の前にいた。
そしてそのすぐ後ろに炎もいる。
珍しい事もあるもんだ、と少し驚く。

「遅い。・・・炎も来たんだ。」
「来ては悪いか?」
「いいや。いいけど、炎の事だし雨降ってるし、なんか起きそうだなーって。」

悪態をつきつつも安心した笑みを浮かべているのを炎と大和だけが知っている。



カラフルアンブレラ


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