遠距離恋愛


(現パロ)


就職のせいで愛する人と遠く離れて数年、この悶々とした気持ちを抱え続けている私は未だに遠距離恋愛と言うものに慣れることができずにいた。お互いに仕事をしているせいもあり、当然のことなのだが連絡する時間は常にすれ違い、回数も格段に減り、電話なんてもっての他。最後に彼の声を聞いたのは一体いつのことだっただろうか。あまりにもすれ違うもんだから、お互いもはや着信を入れることすらしなくなってしまってい る。でも、そんな現状が私はとても辛かった。

「電話…出るかな。」

もしかしたら…、そんな思いを馳せて携帯の発信履歴を開き、一番上の連絡先を選ぶ。ただいまの時間は夜中の12時を回るところ、彼も流石にそろそろ仕事を切り上げる頃だろう。だが、そんな淡い思いも虚しく、携帯からは呼び出し音が流れ続け、それはやがて留守番電話サービスに切り替わった。その瞬間、私は電源ボタンを押して通話画面を消す。余計に淋しさに打ちひしがれた私は、彼へ募る思いを吐き出すかのようにメールを打った。

『たまには、声聞きたいな』

全部我慢して、我慢して、ワガママなんて滅多に言わない私からの、たったひとつのワガママ。叶わなくても良い。ただ、この私の淋しい気持ちを少しでも解ってくれたら、それだけで良い。これ くらいなら、彼も許してくれるかな。


【送信完了】



メールが送信されたのを見届けて、私は携帯画面から目を離す。あぁ、遂に送ってしまった。だけど後悔はしてない、むしろちょっと清々しいくらい。こんなことなら、もう少し早く言うべきだったのかも。色々なことをぼんやり考えながら、私は布団に潜り込んだ。明日になったら、ワガママ 言ったことは忘れよう。無かったことにしよう。 それが私達のためなのだから。そう心に決めた数分後、私の携帯のバイブレーションが久々に発動する。

『帰ったら電話する。』

届いたメールには思いがけない文章が書かれていて、途端に今夢を見ているのではないかと言う錯覚に陥る。まさか、まさか、今夜電話できるだなんて思ってもみなかった。あまりに予想外の出来事に、思わず布団から飛び出てベッドの上に正座する私は、どれだけ動揺しているんだろう。

数分後、私の耳に愛しい彼の声が触れた。


2012/11/23
朱々

(拍手お礼夢)


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