あなたと私を繋ぐ線


(学パロ)



「送る、送らない、送る、送らない、送る…」

自分でも自分に嫌気がさすくらいに目の前の携帯電話をじっと見つめて、呪文のように言葉を唱える。なんでそんなことをしているかと言えば、まぁあまりにも彼から連絡が来ないことが待ちきれなくて、再度自分から連絡するか否かをこうして悩み続けているのである。彼が特進クラスなのは知っている。学力がトップなのも知っている。だからきっと普通クラスの私なんかには想像すらできないくらいの量の勉強を毎日根詰めてやっていて、私と連絡とるのなんて二の次なんだろうなってことも予想はしてる。だけど、だけどそれでも私が送ったメッセージの左下にちょこんとついた【既読】の2文字が、私の心を揺さぶっていた。これって、これってつまり、イタチが既にこのメッセージを読んだってことだ。いつ読んだのかな?送ったのは1時間くらい前だから、読んだのも1時間前って言うのは有り得る、でも、だとしたらそれはイタチが私に返事を返さずに1時間このメッセージを放置してるってことになる。それは私としてはちょっといただけない。あまり返事が返ってこないであろうことを見越してわざわざ疑問文を送ったのに、それさえ返ってこなかったら私は今後いったいどうすれば良いんだろうか。もしかして、特進クラスの女の子と2人でお勉強とかしてるんだろうか?あぁ、ひとりで悶々と考えていたら余計に淋しくなってきた!えぇい、もう耐えられない、送っちゃえ!


【送信しました】



遂に、遂にやってやった!いろんな感情が混ざりあって緊張のあまりどくどくとうるさく脈打つ胸を左手でぎゅうっと抑え、携帯画面を凝視する。…既読マークは、今度はすぐに表示されない。まさか、しつこすぎて愛想つかされたとか?その可能性にハッと気付き青ざめていく顔、しかし時既に遅し。我ながらなんて愚かなんだとは思ったけど、でも、感情に身を任せて送ってしまったメッセージは確実に送信完了されている。お願い、このメッセージは暫く見ないで!苦し紛れにそう念じた瞬間、目の前にパッと【既読】の文字が浮かび上がった。あー。私の思いの丈を存分にぶつけた見苦しい文章が彼の目に…。携帯電話をぼふんとベッドに投げつけ、自分もうつ伏せに身を沈める。瞬間、けたたましいメロディがバイブレーションと共に携帯電話を鳴らした。

「わわわっ、は、はい!」
「…さっきの…読んだ。」
「…うん。ごめんね!あれは気にしないで!私、イタチが忙しいのはわかってるから、さっきはちょっと淋しくなっちゃっただけだから…気にしないで。」
「来週、中間テストだろう」
「うん」
「テストのあとの土曜日、空いてるか?」
「あっ、空いてる!」
「…2人で…どこか行こう」
「うん!」
「だからと言っちゃなんだが…テストが終わるまでは、もう少し連絡を減らしてくれないか、」

やっぱり、しつこかったかな。でも、イタチの言う通り。そりゃテスト期間中に連絡が来たら集中できないよね。私がもっと大人になるべきでした。なのに、そんな私を叱るどころかデートの約束まで取り付けてくれたイタチの心の広さはきっとブラックホール級だ。

「連絡が来ただけで、勉強が手につかなくなる…」
「えっ?」
「と、とにかく週末はそう言うことだ、いいな。」
「あ、うん、」

どこか焦ったような声色の台詞のあと、ぷつんと切れた通話。でも、今の私は悲しがるどころか頬を染めて携帯画面を見つめている。いや、だって、今のって、今のって!滅多に聞けないイタチの本音、連絡があまり返ってこない本当の理由って、まさか?緩みっぱなしの頬を両手で抑えながらベッドに横たわる私は端から見たら相当気持ち悪いんだと思う。でもそれくらい嬉しいんだから仕方ない。土曜日のデートは何を着ていこうかな、早くもそんなことを考えながら、私は眠りについた。



2013/06/14
朱々

拍手お礼夢


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