社内恋愛


パソコンを目の前にして、何分もフリーズしている私は、やはり可笑しいだろうか。開いてあるメール画面にやっとの思いで入力した宛先は愛しのイタチ先輩のもので、今日は待ちに待った金曜日、そう華金。だから私は意を決して、彼に夕御飯のお誘いをしようと、こうしてパソコンと格闘しているのだ。ちなみに今はお昼休憩中なので、このオフィス内には私しかいない。ひとつ深呼吸をして、いよいよキーボードに両手を乗せた。

「こ、こんにちは…?は、おかしいかな、お疲れ様です、かな…」
「休憩時間まで仕事熱心だな、お前は。」
「ひぃ!イタチ先輩!」
「なんだ、人を化け物みたいに。」
「ち、違うんです、すみません!」

背後から聞こえたイタチ先輩の声に驚き、慌てて立ち上がり深くお辞儀をする。先輩は、そんなあたふたしている私が面白かったようで、右手で口許を抑えてくつくつと笑った。ああ、私ったら、 なんて恥ずかしい姿を見せてしまったんだろう。 穴があるなら今すぐにでも、いや、自分で深い穴を掘ってでも潜り込んでしまいたい。一言で言うならば…終わった。だがそれにしても、イタチ先輩はいつ見ても格好良い、と言うか、綺麗。いっそのこと、彼が手にしているスタバのカップになりたい。もしくはストローでも可。

「時に、」
「は、はい!」
「今夜空いてるか?」
「はい、残業なら何時間でも、」
「なら空けておけ、仕事は定時までに終わらせておけよ、良いな。」

頭の上にクエスチョンマークを幾つも並べて、私は首をかしげる。残業じゃないなら、なんだろう?なにか特別な接待でもあったのだろうか、

「ああ…あと、社内のパソコンで俺にメールするな、間違って他の奴に送信されたら厄介だ。」
「へっ?」

イタチ先輩が指差した先には、開いたままのメール作成画面。宛先には、しっかり彼の会社用メールアドレスが記載されている。そこで再度私は穴に入りたい衝動に駆られた。

「あー…すみません、」
「お前の携帯、赤外線ついてるだろ?」
「ついてますけど」

【送信完了】


ぼーっとした頭で、この数分の間に起こった出来事を思い返し、よく考えてみる。携帯の電話帳には、今まで無かったイタチ先輩の個人携帯メールアドレスが入っていて、今夜は定時で上がったあ と、先輩からの呼び出し…

「せ、先輩!」

私の声に振り向いた先輩は、にやりと微笑んでデスクへと歩いていった。


Office love

(つまりは秘密の社内恋愛)




(2012/07/12)

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