It exists.
2 敵味方、全ては混沌の中



「あ、征十郎さん…!」

「こんにちは」

「ふふ、またお会いできて嬉しい」

「ああ、僕もだよ…そうだ、今日はどこかへ行かないかい?」

「!!行きたい…!」

じゃあ、行こうか。彼に手を引かれてついていった。城の外に出ることの方が珍しい私は、これから向かう場所はどんな場所なのだろうか、とわくわくしながらついていった。

「はい」

「わぁ…こんなところ始めてきた…」

小さな建物の中に、沢山の人々がいた。そしてその中にいた、5人が話しかけてきた。

「おっ!見ない顔っすね〜ここは初めてっすか?」

「はい…初めまして」

「………すっげぇ!超礼儀正しいっす…赤司っち、この子は何処のお嬢さまっすか」

「お嬢様……いや、お姫様と言った方が正しいんじゃないか?」

「おい赤司…まさか彼女は…」

「ああ、メイフィールド家のお姫様だ」

はぁ………と溜息をついた緑髪の男性。わぁ、背が高い…。他の皆さんも背が高いなぁ。

「姫様…先程の無礼な事をしてしまい、失礼しました」

「あ、っ、あの」

「彼女は満更でもないようだが?むしろ、そう絡まれた方が嬉しいそうだよ」

「所で、赤司とその姫様はどういう関係なんだ?」

「ふふ、私はただのお友達よ」

へぇ…すごいな、流石赤司。と頷く5人の人々。その後、征十郎さんに彼らを紹介され、彼等もまた私の友達になった。

その時はただ、嬉しくて周りになんか気づかなかった。



*


「アリス…………」

「い……やぁ………こないで…」

「怖がらないでくれ…」

「いやよ!こないで!こないで!!!」

月明かりのみに照らされた彼は、どんどん私への距離を詰めていく。彼の方を向いたまま、後ろにあとずさった。もう、足は動かない。きっと私もここで殺されるんだ。

それなら―――。

近くの兵士が持っていた剣を手に取り、彼へと向けた。

「それ以上近付けば、この剣を刺すわ!!」

「………」


剣の先を向けても、ただ無言のまま近付いてくる彼。
ふっ、と彼の足が止まり、ついに私の目の前に来る。私は彼目掛けて、剣をついた。


「!!」


流れる血などなく、剣の刃が粉々に崩れていった。私は驚き、腰が抜けてしまった。ああ、そうか、この人はきっと悪魔だ…。私達を殺しに来たんだ。

もう、いい、死んでしまおう。死を覚悟して目を閉じた。しかし、何時までたっても危害が加えられることはなかった。私は目を開けた。その時、彼が私をそっと抱き締めたのだった。しかし、その言葉を聞いたとき、私は絶望したのだった。


「僕は魔王だ、アリス、君を愛している。君の全ては僕のものだ…。反論するならば君も殺すことになる」

「…っ………………」

「さぁ、行こうか」


まるで今までの彼が全て嘘だったかのように、冷たく微笑んだ。そして私は、自室のベッドへと連れてこられたのだった。


「何がしたいの……」

「何だと思う」

「私が欲しかったなら、最初からそう言えばよかったじゃない!!私の幸せを全て壊して、城の者は皆殺し?なにが、一体何がしたかったのよ!!!」

「君は、何も知らない」


何が…と、聞き返せば思い切り押し倒されてベッドがギシリ、と揺れた。先程のせいで痛む背中を気にしつつも、何が知らないのかと、次の言葉を待った。

「君は知らないが、僕達は君の家族達に苦しめられ、虐げられた。だから君に近付いて、あいつらの一番大切なものを奪おうと思ったんだよ。しかし、途中で気が変わってね。君は何も知らなければ、僕にも変わらず優しくしてくれた。だから、あいつらを殺すことにしたんだよ」

「な………お父様とお母様はいつも国のために…」

「それは表の顔だ。裏ではどんな汚いことでもさせていたよ。そう、ある一族は気色が悪いから皆殺しにしろ…だとかね」

「そんなの嘘よ!!」

「生憎、これは全て事実なんだよ」


「もう、誰が敵で誰が味方かわからないだろう」


そこから、私の記憶はない。ただ、目が覚めれば、血塗れだった服は美しい服に変わり、死体だらけだった城は、綺麗になっていた。






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