キャンディグロス
!)最初から少し背徳的な表現があります。裏ではないですが、苦手な方は閲覧されないようにお願いします。
「んっ………ふ…」
「千尋……」
「はぁ………はぁ………あか…しくん…」
「本当に美味しい……」
「んん………赤司くんのばかぁ………」
コロコロコロ、と床を転がるグロスの容器。その中身はグロスではなく、甘美な飴。玲央から貰った物を、千尋へと渡した。勿論、中身は飴だと伝えていなかったが。耳まで真っ赤にして、瞳に涙を浮かべる姿がまた、情欲をそそる。僕は再び千尋へと深く口付けた。
*
ちょうど部活が終わった頃、千尋に声を掛けた。金曜日だし、今日は家にでも来てもらおうかな、と思い彼女を誘った。
「お邪魔します………わぁ、すごい………」
「女性を部屋にいれるのは、君が初めてだよ、千尋」
「えっ……すごい…赤司くん紳士だ…」
そうかい?と笑って聞き返せば、赤司くんの事だから彼女の一人や二人いると思ってた…と返された。
それは有り得ない。だって僕は、君に初めて会った時から君しか見えていないから。中学校も同じで高校も同じ、何だか僕達は運命みたいだ。
そして、彼女を椅子へと座るように促し、僕は怜央に貰ったグロスをとりにいった。確かここに入れておいた筈だ…。引き出しを開け、キラキラと輝くそれを手に取る。彼女がいる部屋へと戻ると、そわそわしながら辺りを見回していた。
「千尋?」
「あ、赤司くん…!」
「っふふ…どうしたんだい…」
「いや、凄いなぁって思って…なんか綺麗過ぎて緊張する…」
照れながら笑う千尋に、これあげるよ、とグロスを差し出せば驚いたように僕を見上げた。
「えっ…こんな高そうなもの貰えないよ…」
「怜央から貰ったんだが、僕がこんな物使うと思うかい?」
「………使わないと思います…」
「なら遠慮せずに受け取るんだ、千尋」
「ありがとう、赤司くん」
再び微笑む千尋に、どういたしましてと微笑んだ。嬉しそうにそれを持ち、笑う彼女に、早くそれを付けてもらいたい。中身は飴なのだから。
「千尋、それ、つけて欲しいんだが」
「えっ、いま…?」
「ああ」
「……いやだ」
「どうして?」
「恥ずかしいから……………」
もじもじと下を向く千尋の隣に座り、グロスを取った。すると、驚いたのか顔を上げ、何度も瞬きを繰り返した。じゃあ、僕が塗ってあげよう。と言えば、じ、自分で塗るからまって!と言われた。見られるのが恥ずかしいらしく、立ち上がり向こうに行ってしまった。まあ、塗ってもらえれば僕の作戦は成功するからいいのだが。
「あ…赤司くん…」
「とても似合っているね」
「これ…なんか甘いよ…?」
「へえ、そうか。僕は使わないから分からないが、それも仕様なんじゃないか?ほら、おいで、千尋」
ぽんぽんと隣に座るように促し、千尋を隣に座らせる。心做しか顔が赤い千尋の頬に手を触れ、こちらへと向かせる。すると、瞳が揺れた。
「あ……………赤司くん…………?」
「好きだよ、千尋」
「えっ?」
ぐいっと引き寄せ、軽く口付けた。何が起こったのか分からずに慌てる千尋。グロスを手に取り、彼女の唇へと塗ったあと、再び口付けた。今度は先程よりも深く口付けたため、苦しそうにもがく千尋。唇を離すと、銀糸がひき、彼女の唇からも唾液が垂れた。
「な………にするの………赤司くん…………」
「そのグロス、中身は飴らしいんだ」
「えっ………?」
そう言い、再びそれを手に取ると、千尋の唇へと塗った。僕のせいで乱れた呼吸、赤く染まった頬、僕は抑えられるわけもなく、彼女を押し倒し再び口付けた。
「んっ………ふ…」
「千尋……」
「はぁ………はぁ………あか…しくん…」
「本当に美味しい……」
「んん………赤司くんのばかぁ………」
「それよりも千尋…返事は?」
「な…んの?」
「僕は告白したつもりだったんだが、もう一度言おうか。好きだよ、愛してる、千尋」
バッと手で顔を覆った千尋。私も………です。と言った。泣いている顔を見られたくないのか、ずっと顔を覆ったままの手を、優しく退けて微笑んだ。
「じゃあ、いただきます」
「〜〜!!ば、ばか………」
そして最後まで顔が真っ赤の千尋へと、再びキスをした。
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