01
源外を逃がし高杉と別れ、お登勢の店まで帰ってきて銀時は足を止める。雪路の事を新八と神楽には話さないといけない。それはわかっていたが、お登勢にも紹介しておくべきだろう。大家であり、普段も世話になっているのだから。そう思い至り、お登勢の店の引き戸を引いた。

「いらっしゃ……なんだ銀時か。その子供はどうしたんだい?」

もう夜になり、客もそれなりに入っていた。お登勢は雪路が銀時の子だと思うはずもなく、また厄介ごとでも引き受けたのかと気楽に声をかけた。

「俺の息子だよ。雪路ってーんだ」
「そうかい、アンタのむす……ハァァァ!?」

煙草を吸っていたお登勢は驚きに目を見張り、灰をテーブルに落とした。

「アンタノ子供ヲ産モウナンテ、奇特ナ奴ガイルモンダ」

この辺りキャサリンは特に反応はない。しかし付き合いが長い分お登勢の驚きは大きい。銀時があまり女性に興味を示さないのをそれとなく感じ取っていたので、いきなり子供と言われてもついていけない。

「子供ってアンタ、母親は誰だい?結婚は?」
「あー、新八と神楽にもまだ説明してねーんだわ。一緒に上で説明していいか?」

勿論説明して欲しいので、お登勢はキャサリンに店を任せ万事屋へ上がる。

「おーい、帰ったぞー」
「お帰りなさい、銀さん」
「お帰りアル」

カラカラと扉を開け帰宅する。お登勢と二人応接間に踏み込んだ瞬間、空気が固まった。

「ぎ、銀ちゃんその赤ちゃんは?ま、まさかバーさんとの……!」
「ないでしょ!!何考えてんの神楽ちゃん!……いやでも結婚報告だったりしますか?」
「「気色悪ィこと言うんじゃねェェェェェ!!」」

銀時とお登勢は揃って絶叫した。まさかな勘繰りに、本能が拒否しつつ中途半端に想像してしまい悶える。鳥肌が凄い。
同時に銀時は誰にも見えない存在の男に殺気を込めて笑いかけられ、冷や汗が流れた。

(アンタの奥さんに手ェ出したりしないから!さすがに興味もわかねーわ!!)

「ふぅあぁう……」
「あ、悪ィな雪路。静かにすっから」

騒がしさに眠っている雪路が口元を動かし寝返りを打ち、銀時は謝り腕を揺らしてあやす。
雪路が声を出した瞬間ピタリと動きを止めていた面々は、再び寝息を立て始めたのを見て静かに近寄ってくる。

「俺の息子の、雪路だ。断ッッじてバーさんとの子じゃねェ」
「銀さんの子、ですか。確かに髪の色は同じですけど」
「銀ちゃんに似てなくて可愛い顔ネ」
「天パでもないしねェ」

いや、銀時似の佳月も可愛かったから。銀時に似てたら可愛くないみたいな言い方はやめて欲しい。そして天パじゃないのは、銀時の天パ遺伝子より高杉のストレート遺伝子が強かっただけだ。

「で、母親はここに呼んで一緒に住むのかい?」
「結婚式するアルか?」
「いや、結婚式はしねェし一緒にも住まねェ」

銀時の答えに皆一様に顔をしかめる。やはりいい顔はしないだろう。銀時も高杉に聞いた時に似たような反応をした覚えがあるのでわかる。

「ご飯一杯送ってくれた彼女じゃないアルか?浮気したから無理なのヨ」
「アンタ、男なら責任とりな。その子にとってもよくないだろう」
「やっぱり銀さんが不甲斐なくて子供と一緒に捨てられたんですか」

どう答えたものか。高杉が現在指名手配されている以上、詳しく話すつもりはない。相手は女ではなく男だというのは言ってもいいかもしれないが、今は紹介出来ない以上心配事を増やす必要はないだろう。

「神楽の言う“銀さんの彼女疑惑の人”で相手は合ってる。で、捨てられたんじゃありませんー!ちょっと事情があるというか、まだ今は一緒には住めねーんだよ」

さりげなく結婚云々の話はすっ飛ばした。男同士で結婚と言われてもピンと来ない。
どちらかと言うと銀時への非難より心配が勝っているようで色々言われたが、最終的には銀時の言い分で納得してくれた。
次の日には雪路の布団や服、紙おむつに布おむつなど色々と届けられ、銀時の育児生活は始まった。銀時の育児に関する知識は少ないが皆無でもない。前世では年の離れた妹の世話をしたこともあって、まだ慣れた方だった。布おむつの止め方が緩くてズレたり、ミルクの人肌温度がよくわからずぬるくなり雪路に嫌がられたりしたが。危険そうなものは置かないようにしたり、定春が雪路を噛むことのないよう躾たり、忙しく雪路のいる生活に慣れていった。今のところ夜泣きがないのがありがたい。
神楽もよく雪路の面倒を見てくれるので、力のコントロールに失敗しないかハラハラしながらも見守っている。定春も尻尾を使い遊んでくれているようだ。お登勢もしょっちゅう様子を見に来る。妙に知らせた時は弟と似たような反応だったが、今ではお古の着物を持って来てくれる。
まだハイハイも出来ないが、雪路は大人しい性格らしい。源外の様子を見に行った時、三郎はもっとやんちゃだったと言われた。高杉の育児日記にも、佳月と比べて大人しいと書かれている。それがハイハイをしだせば変わるのだろうかと、その時が来るのを楽しみにしている。





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