02
なんとか当日、夕方になってカラクリは完成した。神楽は三郎と遊んであまり役に立たなかったとか、何故か源外の飯の用意まで銀時がする羽目になったとか、色々あったが一応完成した。

「なんとか間に合いましたね」
「まァ、ところどころ問題はあるけど」
「ケッ……もともとてめーらが来なきゃこんな手間はかからなかったんだよ。余計なことばかりしやがってこのスットコドッコイが」
「公害ジジーが偉そーなこといってんじゃねー!まずは公害扱いされる前に近所に挨拶しろってんだ……あ?」

金属音のする袋が源外から投げられた。見ると小銭が沢山入っている。

「最後のメンテナンスがあんだよ。邪魔だから祭りにでもどこでもいってこい」
「ありがとう平賀さん!!」
「銀ちゃん早く早く!」

子供二人がはしゃいで走り出し、銀時も手を引かれる。何故か三郎も着いて来ていて、結局源外も祭りに繰り出すことになった。
新八と神楽は三郎と出店を冷やかし、銀時と源外は三人が見える位置にあった飲み屋で酒を飲む。

「……フン、妙なモンだな。なんだか三郎も楽しそーに見えるわ」
「そりゃいつも険しい顔したジジイといるよりは楽しいだろ」
「フン……息子と同じよーなこと言いよる」
「息子?アンタそんなのいたの」
「もう死んじまったがな。勝手に戦に出て勝手に死んじまったよ」

酒が入って口が軽くなったのか、源外は息子について話してくれた。

「俺に劣らずカラクリ好きな奴でよ、あぶねーって言ってんのに勝手に工場に入って機械をいじりまわすクソガキだった……。あの頃は発明なんつっても鳴かず飛ばずでジリ貧だったがよォ。今にして思えばあの頃が一番楽しかったかもしれねーな。
昔は何も考えずただ好きだからカラクリいじくりまわしてたが、江戸一番の発明家だとか言われだしてから、カラクリは俺にとって何かを得る手段になりさがっちまった……。
息子の野郎はそんな俺に反発して出てっちまったよ。それっきりだ」

源外は口にしなかったが、銀時は知っている。息子はもう死んでいるということを。

「……そういやお登勢からきいたが、てめーも戦出てたんだってな」
「あん?戦っつっても俺のはそんな大層なモンじゃねーよ。二十年前天人が来た頃は侍も派手にやってたよーだが。俺ァその頃はまだハナタレだったしよー。
その後十数年は各地で散発的に侍がゲリラ戦してただけさ。まァ、それでもたくさん仲間達が死んじまったがな」
「敵をとろうとは思わんのか?」
「あ?」
「死んでいった中にかけがえのない者もいただろう……そいつらのために幕府や天人を討とうと思ったことはねーのか?」

思ったことがないとは言わない。第一、戦に参加した一番の理由が師を取り戻すためだったのだ。思わないはずがない。しかしそれを聞くということは、源外は。

「……ジーさん、アンタ」
「アー、いかんいかん。徹夜明けの酒はやっぱりきくわ。最後の調整があるから俺ァ戻るわ。オーイ!三郎いくぞォォ」

源外はそれ以上語ることなく去って行った。銀時も屋台を出て出店の並びを歩き、考える。銀時の勘は、源外がよからぬことを考えていると告げていた。どうするべきか。
辺りには出店の食べ物の匂いが漂っているが、不意に鼻先を覚えのある香りが通った。微かなそれは、ここで嗅ぐはずのないものだ。

(まさか、そんな……)

自分でもよくわからない緊張で体が固まる。いくつもの足音の中、一つだけ妙に大きく聞こえる。草履で地をこする音は、銀時の背後で止まった。微かだった香りは銀時を包むように広がる。

「久しぶりだなァ、銀時。ちったぁマシな顔になったか?」
「たかす……っえ"?」

振り向いた銀時は、見覚えのある男を見て固まる。左目に包帯を巻いた隻眼も、艶やかな髪も変わらない。女物のように派手な長着も、以前から男が好む類いのものだ。己の知る高杉晋助だ。しかし、その腕。片手に一人ずつ赤子を抱いていた。

「えっ?あの……え?ああああの……こ、子守りデスカ?高杉サン」

ぎこちなく、油のさされてない機械のようにゆっくりと体を高杉に向け、ひきつった笑顔を向けた。それを見た高杉は面白そうに口角を上げる。

「あァ。こいつらにとっちゃ、生まれて初めての祭りだ。花火も見せてやらねーとな。ナァ?そろそろ平賀源外の見せ物も始まんじゃねェか?」

高杉は途中で赤子二人に問うように顔を向けた。これは、一体、何が、起こっているのだろうか。

「あーえっとー?その子達、高杉の子……なわけないよねェ!うんごめんごめ……」
「俺の子だが?」

銀時は頭が痛くなってきた。諸々にショックを受ける前に、混乱が酷い。

「ソーナンダー。高杉、結婚したの?」
「いや、まだだ」
「おまっ、子供作るだけ作って放置!?責任とって結婚しろよ!」

思うところがないわけではないが、子供まで作って結婚はしていないとか、子供にとってもよくはないだろう。

「そうだなァ。なら、俺と結婚しろ銀時」
「ハイ?その子供作った相手と結婚しろっつってんの!!」
「だから言ってんじゃねーかてめーに。結婚しろって」
「は、あ……?」

もう駄目だ意味がわからない。昔から意味のわからない行動をする男だったが、いくつかの行動を繋げれば意図は理解出来ていた。しかし今回は長く会っていないのもあり、本当に意味がわからない。銀時は高杉とそういった行為をしたことはないし、第一男なので子供は産めない。だから銀時の子ではないというのに、どういうことか。

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