01
散々だった宇宙旅行から帰宅。お登勢に土産を渡し、家の空気の入れ替えをするため窓や扉を開けて回った。自室にしている和室の窓を開け、何気なく下を見た。するとベランダに女物のパンツが落ちている。とりあえず光の速さでパンツを丸め輪ゴムで縛り、ティッシュに包んだ。多分どこかのベランダから飛んできたのだろうが、神楽に見つかれば何と言われるかわからない。
その後妙の相談により、それが巷を賑わす怪盗ふんどし仮面の仕業で、綺麗な娘の下着を盗みモテない男にばらまいているのだと知った。別に下着もらった所で嬉しいと思うほど非モテではないのだが。何でモテないと判断したのか。長く彼女いないからとか普段の生活から推測とかそういう店に行ってないからとか?
とりあえず下着云々の前にストーカー染みた推測が気持ち悪くて、妙と共に血祭りに上げた。銀時はモテないのではなく、フラグをすべて折っているだけだ。

「あ、忘れてた」

哀れみから施しされたらしいパンツの存在を忘れていた。ティッシュに包んだままゴミ箱に捨てる。数日忘れていた程度に、銀時はパンツに対して執着がない。
今日はお登勢を通して町内会から依頼が来た。何やら騒音をどうにかして欲しいということなので、対策のものを取りに行き、お登勢に場所を案内される。そこは源外庵と書かれたガシャコンガシャコンと機械音の煩い場所で、周りにはガラクタかゴミといったものが溢れ返っている。その前で、近所の奥様、というかオバサン方が抗議していた。お登勢もオバサン集団に混じり叫ぶ。

「コラぁぁぁぁぁ!!クソジジイぃぃぃ!!平賀テメッ、出て来いコノヤロォォォォォ!!」
「てめーはどれだけ近所の皆様に迷惑かけてるかわかってんのかァァ!!」
「昼夜問わずガシャコンガシャコン!ガシャコン戦士かてめーはコノヤロー!!」
「ウチの息子なんてなァ、騒音で気ィ散っちゃって受験落ちちゃったんだぞ。どーしてくれんだオイ!!」

皆様、相当鬱憤が溜まっているようだ。

「江戸一番の発明家だかなんだかしらねーが、ガラクタばっかつくりやがって。私らかぶき町町内会一同も我慢の限界だ。今日こそ決着つけてやる。オイ、ヤローどもやっちまいな!!」

お登勢に声を掛けられ、銀時は木刀を入口のシャッターに突き刺した。開いた穴から神楽が導火線に火をつけた白い玉と黄色い玉を三つずつ投げ入れ、新八が粘土で穴を塞ぐ。すぐにシューシューという音、少し遅れてパァンと爆竹よりも大きな音が大量に響く。

「おいィィィィィ!!てめっ、何してんだコラ。私は騒音止めてくれって言ったんだよ!なんだコレ?更に煩くなってんじゃねーか!」
「まーまー、少し我慢しろって。あれだけの騒音立てて気にならねェんだ。きっと耳が遠いに違いねー。ならそれ以上の音を立てりゃァ聞こえんだろ。抗議はそっからだ」

しばらくしてシャッターが開き、大量の煙と、シャッターという隔てがなくなり更に大きくなった音が銀時達を襲う。シャッターを開けたのは鎧っぽい格好をしたカラクリだった。

「……え?これが平賀サン?」

見上げていると、銀時はカラクリに頭を掴み持ち上げられた。

「いだだだだだ、頭とれる!頭とれるって!」
「止めろォォォ平賀サン!!」

その暴挙にお登勢を除き、オバサン達は逃げ出した。
よく聞けば機械音が止まっているので、銀時は丁度いいからとそのままの体勢で黒い玉と緑の玉を三つずつ源外庵の中へ放り込んだ。床に転がった玉が弾けると黒い粉と緑の粉が飛び、音は消え煙も晴れていく。

「たわけ、平賀は俺だ。人んちの前でギャーギャー騒ぎやがってクソガキども。少しは近所の迷惑も考えんかァァァァァ!!」
「そりゃテメーだクソジジイ!!」

源外庵から出てきた源外に盛大な突っ込みが入った。銀時も同じ思いだったが、頭にかかる圧力が痛くてそれどころではない。

「てめーの奏でる騒音のおかげで近所の奴は皆ガシャコンノイローゼなんだよ!」
「ガシャコンなんて騒音奏でた覚えはねェ!『ガシャッウィーンガッシャン』だ!」
「源外アンタもいい年してんだからいい加減静かに生きなさいよ。あんなワケのわからんもんばっかつくって“カラクリ”に老後の面倒でも見てもらうつもりかイ」
「うっせーよババア!何度来よーが俺ァ工場はたたまねェ!帰れ!」

ジジイとババアの醜い言い争いが熱を上げる。

「オイ三郎!かまうこたァねェ、力ずくで追い出せ!」
「御意」

源外の言葉にカラクリの三郎が返事をし、手に持つ銀時を振りかぶる。

「ん?アレ?オイちょっ……」

投げられた銀時は綺麗に源外へ向かって飛び、その頭が源外の顎へヒットした。

「く、首が痛ェ……」

負荷がかかった首の痛みに涙目になりつつ、源外を縛り上げる。新八と神楽に指示し、中のカラクリ関係の道具を運ばせる。

「てめーら何勝手に引っ越しの準備進めてんだァ!ちきしょオオ!!縄ほどけェェ。脱糞するぞコノヤロォォ」
「オイ、茶頼むわ」
「御意」
「三郎ォォ!!てめェ何こきつかわれてんだァ!助けんかい!」

三郎が持ってきてくれた茶を啜り、肩を回し首をさする。傷めてはいないようだが、かなり痛かった。重力の力は凄い。

「ジーさん、こいつ言葉通じんだな」
「三郎はなァ、ある程度の言語を理解できるんだよ!自分に攻撃的な言葉や行動をとる奴には鉄拳で答えるぞ」
「フーン、どうやって?ジーさんを助けもしねーじゃん」
「よし!今すぐわしを解放しろ!早くしろポンコツ!ぶはっ」

まさに身を呈して教えてくれた。ポンコツの言葉を聞き逃さなかった三郎は源外に鉄拳制裁した。

「……お登勢サン。あの人ホントに江戸一番の発明家なんですか?」
「あん?なんかそーらしいよ。昔っから好き勝手ワケのわからんモンつくってるだけなんだけどね。私らにゃただのガラクタにしか見えないね〜」
「ガラクタなんかじゃねェ。ものを創るってのは自分の魂を現世に具現化するようなもんよ。こいつらはみんな俺の大事な息子よ」
「息子さん、あっちで不良にからまれてるよ」

子供が飛行機の模型で遊ぶように、神楽が三郎を持ち上げ遊んでいる。

「びゅ〜ん」
「い"や"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
「ロケットパンチ発射アル!」
「止めてェェ!!そんな機能ないから!腕もいでるだけだから!」

遊びながらも何とか住宅地から離れた河原に運び込んだ。

「これでヨシと。ここなら幾ら騒いでも大丈夫だろ。好きなだけやりな」
「好きなだけってお前……みんなバラバラなんですけど……。なんてことしてくれんだてめーら」
「大丈夫だヨ。サブは無事アル」
「御意」
「御意じゃねーよ!なんか形違うぞ!腕ねーじゃん!腕!!」

神楽は三郎を気に入ったようで、肩車してもらい傘を差していた。その三郎は両腕がなくなっている。
源外は四つん這いになって事態を嘆く。

「あ"あ"あ"どーすんだ!これじゃ祭りに間に合わねーよ!」
「祭り?」
「三日後に鎖国解禁二十周年の祭典がターミナルで行われんだよ。それに珍しく将軍様も出てくるらしくてよォ。そこで俺のカラクリ芸を披露するよう幕府から命がくだってたんだよ。どーすんだ。間に合わなかったら切腹モンだぞ」
「……仕方ねェ、ちょっくら待ってろ。今カレー煮込んでんだよ。火止めてきたら手伝ってやらァ」

本来ならここで町内会からの依頼は終了、あとは気にしなくてもいい。しかし気になることがあった。
銀時は三郎を見つめ目を細めると、一度帰るため河原に背を向けた。





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