04
「あれ?何?ウソ?何?あれ?」
「アッハッハッ。いよいよ暑さにやられたか。何か妙なものが見えるろー。ほっとけほっとけ、幻覚じゃ。アッハッハッ」
「いやちょっと坂本さん、何か巻き付いてますけど」
「ほっとけほっとけ、幻覚じゃ。アッハッハッハッハッー」
「うわァァァ!坂本さァァァん!」

鈍い坂本は触手に巻き付かれ囚われの身となる。
この触手砂蟲といい、この星の生態系で頂点に立つ生物だ。普段は静かだが、不時着だ救援だで騒いだせいで目を覚ましたようだ。

「アッハッハッハッ。わしがこんな所で死ぬかァァ!みんなァ、逃げェェい!」

坂本は銃を取り出すと自分ではなく、他の者を捕まえている触手を次々と撃ち助けた。しかしそれが砂蟲を刺激したのか、砂蟲は本体を砂の中から出して船に絡み付く。その大きさは船などより余程大きい。

「ヤバイ、船ごと地中にひきずりこむつもりだ!」
「大砲じゃあああ!!わしは構わんで大砲ばお見舞いしてやれェェェ!」
「でも坂本さん!!」
「大砲うてェェェ!!」

新八は躊躇したが、陸奥は躊躇いなく大砲を向けるよう指示する。

「ちょっ……あんた坂本さん殺すつもりですか!?」
「奴一人のために乗客全てを危機にさらせん。今やるべきことは乗客の命救うことじゃ。大義を失うなとは奴の口癖……撃てェェェ!!」

大砲が放たれ、砂蟲にぶち当たる。爆ぜた砂が辺りに舞う。坂本は運良く当たらなかった。

「奴は攘夷戦争の時地上で戦う仲間ほっぽいて宇宙へ向かった男じゃ。なんでそんなことが出来たかわかるか?
大義のためよ。目先の争いよりももっとずっと先を見据えて、将来の国のために出来ることを考えて苦渋の決断ばしたんじゃ。
そんな奴らに惹かれてわしら集まったんじゃ。だから奴の生き方に反するようなマネわしらはできん。それに奴はこんなことで死ぬ男ではないきに」
「いやいやいや!死んじゃうってアレ!どう考えても死ぬよアレ!地中に引きずり込まれてる!!」

砂蟲はその巨体を砂の中へ沈めだした。触手に捕らわれている坂本も、徐々に砂の中へ沈んでいる。

「潜り込む前にしとめるんじゃァァ!!」
「坂本さんば救えェェ!!」

再び大砲の照準が定められようとし、銀時が砲身に飛び乗り筒に木刀を突き刺した。

「こんなモンぶちこむからビビって潜っちまったんだろーが。あとは俺にやらせろ」
「銀さん!」
「辰馬ァ、てめー星をすくうとかデケー事吐いてたくせにこれで終わりか!?昔からてめーは口だけだ……俺を見ろ、俺を。俺ァてめーの誓いは守るぜェェ!!」

勢いよく砲身から砂の中へと飛び降りる。
手のひらからこぼれ落ちるものは拾い上げる。すべてを元通り掴めたわけではないけれど、そう自分に誓い生きてきた。それを辰馬も知っている。己の手のひらから辰馬がこぼれ落ちるのはまだ許さない。許すのは、曾孫に囲まれ寿命で大往生する時だ。
銀時の性質を危ういと思いながら、辰馬も立派に世話になっている。彼が拾い上げてくれるなら、辰馬も銀時の手のひらの上、その宙で瞬くのだ。

「ぶへぁっ!!」

砂の中手探りで坂本の手を掴み、どうにか地上へと戻った。地表近くは熱砂で、顔や腕が軽く火傷になっている。髪の隙間という隙間に入り込む砂を躍起になって払い落とす。

「てめー勝手に戦線離脱しようとしてんじゃねェよ」
「すまんのう、助かったぜよ!」

何も考えていなそうな能天気な坂本に、銀時は溜め息を吐いた。




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